守りたいモノ�� ページ18
ニコリと笑う太宰は
もはや目が笑っていない。
石川は奥歯を噛み締める。
「…何故だ…！何故、私はこうなる！！」
「……」
「何時も…、私の元から居なくなる…何故だ」
床に這いつくばりながら叫ぶ石川。
太宰は溜息をつく。
「…君は可哀想な人だ」
「何…？」
「まるで“ 愛 ” を知らない」
石川は目を見開く。
「くくっ…愛？
そんなもの、知ってますよ」
「いいや、知らない」
太宰は石川を真っ直ぐ見つめる。
「…君は
“ 愛 ” を間違えて捉えている」
「！？」
石川は一瞬顔を歪める。
「何処でそれを知ったのか判りませんが…
確かに私は母に捨てられた。
母は私の父を裏切り、違う男の元へと行った…！
この時、私は思ったのです。
父は母に縛りつける程の“ 愛 ” が無かった、と」
石川は顔を上げ、妖しく笑う。
「石川グループは 正に私の理想でした…
“ 愛 ” に飢えた人を買い、求める
“ 愛 ”さえあれば一生、
誰かに捨てられることなく生きていける…
それの何処が間違っている！？ 」
そう必死に叫ぶ石川は
まるで子供の様だった。
「“ 愛 ” は縛るものではないよ。
…まぁ、ここで教えても判らないだろうからさ」
そう云って太宰は前方に視線を移す。
…視線の先には、
重力子弾を石川に振り下ろす直前の中原。
「……夢の世界で、答えを探してご覧？」
ﾄﾞｶﾞｧﾝ______________
.
.
.
.
衝撃により木片が飛び散り、
木屑が舞い上がる。
中原は血を吐き出しながら
浅い呼吸を繰り返していた。
そしてまた重力子弾を作り出す。
「……全ては終わったよ、中也」
「！」
そう云って、太宰は中原に触れる。
段々 中原の身体に在った痣が引いていった。
目が正気に戻る。
「うっ…ｹﾞﾎｯ…ｹﾞﾎｯ」
咳き込みながら膝をつく中原。
「終わっ…たか」
「嗚呼」
太宰が頷くのを一瞥すると、
中原は近くの木柱に寄りかかった。
「君がプライドを捨てた最後の頼み…
“ 汚濁を止めろ ” と云う頼みは果たしたからね？」
「ハッ…捨てて無ェって、云ってんだろ…」
そう云って、
中原は紅に染まった空を眺めた。
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レタス - とても読みやすい小説でした。ありがとうございました！ (11月5日 10時) (
レス) @page29 id: 56b8d7e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - とても物語の世界に引き込まれる感覚で、最初から一気に読んでしまいました。本当に面白かったです！中也と夢主ちゃんとの関係性もドキドキして読むのが楽しかったです。この作品を見つけられて本当に良かった☺️ (7月9日 22時) (レス) @page30 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
meme - 中也さんと夢主の関係がとても良くて感動しました。文才ありますね。すごいです。 (2021年9月5日 18時) (レス) id: 8a122b7869 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - とても感動しました泣 (2021年4月6日 19時) (レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
しま - 今まで読んだ中で一番深いと思ったお話でした。すごく読みやすかったです！ (2020年7月23日 19時) (レス) id: 2d44a29385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花翠 | 作成日時：2018年3月18日 20時
