『蝶』 ページ1
.
ふわっと、桃色の花びらが舞う。
「見てよ!」
蓮華が花壇を指差して云った。
「蝶々がいるー!」
「まぁ、本当ね」
夕霧は蓮華の頭を撫でながら
彼女の指差す先を見た。
『…蝶々?』
夕霧の隣で本を読んでいた黒蝶が
ゆっくりと花壇に目を向ける。
「黒蝶、知らないのー?」
『本でしか、見たことない』
そう云いながら、
黒蝶は花の上を飛び回る蝶々を見つめた。
『…踊ってるみたいだね』
「ふふ、確かにそうね」
三人の目線は、すっかり花壇の蝶々に釘付け。
「…ここで二人に問題です!
蝶々は何故 羽があるのでしょう!」
夕霧は、黒蝶と蓮華を交互に見ながら云った。
二人は考えるように上を向く。
「う〜ん、いろんな花の蜜を吸うため?」
『……生きてくため』
それぞれの回答に夕霧はふっ、と笑った。
「二人とも、正解。間違ってないわ。
…でもね、こんな理由もあるのよ」
そう云って、夕霧は愛おしそうに蝶々を眺めた。
「________愛する人に、想いを届けるため」
風が吹き、花びらと共に蝶々も宙へ舞い上がる。
「…花はそこでしか生きられない。
でも、蝶々は自由に空を飛べるでしょう?
好きな所へ行ける。
愛する人の所へ、行ける。
________私も、蝶々になりたかった」
夕霧の最後の言葉は風の音と共に消えていき、
二人の耳には届かなかった。
「そっか、じゃあ蝶々は幸せを運ぶんだね!」
『どうして?』
「だって、好きだって想いを届けるために飛ぶんでしょ?
それって、とっても幸せなモノじゃない!」
眩しい笑顔で云う蓮華に、黒蝶も思わず笑った。
『そうだね。
_______蝶々、かぁ』
もう一度、花壇を見る。
蝶々は、
ヒラヒラと可憐に飛び回っていた。
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レタス - とても読みやすい小説でした。ありがとうございました！ (11月5日 10時) (
レス) @page29 id: 56b8d7e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - とても物語の世界に引き込まれる感覚で、最初から一気に読んでしまいました。本当に面白かったです！中也と夢主ちゃんとの関係性もドキドキして読むのが楽しかったです。この作品を見つけられて本当に良かった☺️ (7月9日 22時) (レス) @page30 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
meme - 中也さんと夢主の関係がとても良くて感動しました。文才ありますね。すごいです。 (2021年9月5日 18時) (レス) id: 8a122b7869 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - とても感動しました泣 (2021年4月6日 19時) (レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
しま - 今まで読んだ中で一番深いと思ったお話でした。すごく読みやすかったです！ (2020年7月23日 19時) (レス) id: 2d44a29385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花翠 | 作成日時：2018年3月18日 20時
