氷と雷が描くイナイレ界part3 (ページ48)

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一抹の過去ページ48

ゲームをして待っている間、聖羅の事を考えていた。

なんで殴られ屋なんてやっているのか。誰にやられたのか。

……彼女も自分と同じ、自分の事をどうでもいいと思っている人種なのか。

そんな事を色々考えながらも、ゲームのコントローラーをいじって技を選択する。

聖良「あﾞあﾞあﾞああ！壁張り挑発で封じられたあああ！」

葉月「おやおや、初手でオーロンゲ相手かあ。型が豊富だからねえ。
メンタルハーブ持ってたら解除出来てただろうけど、こうなったら耐久の高い手持ちに交代して攻撃を受けるか、そのまま突っ込んで攻撃するしかないねえ」

初めてランクマッチをやってみてるけど……うーん、これがプレイヤー同士のバトルかあ。選択が難しい。

空さんの事を考えてたのもあるかもだけど。

葉月「気になる？聖羅ちゃんのコト」

聖良「うぇ！？な、なんでわかったんですか？」

聖良が驚くと、問い掛けには答えず葉月は「ふふっ」と口元に手を当てて笑う。

葉月「聖羅ちゃんはねえ、今の天空家に引き取られる前から、本当の意味で自分のコトをどうでもいいって思ってるんだ。それこそ、死んだってイイって。

だから敢えてただの刺激を通り越して自滅に追い込む。
……なのに、彼女は死ねない。大きな事故に遭っても、奇跡的に助かるとかじゃなくて、奇妙なほどに無傷なんだ。

世の中に絶望してるとか、かといって希望を持ってる訳でもない、ただただ死んでないから動いているだけ。
それが聖羅ちゃんだよ」

聖良「…………」

葉月「俺も、小さい頃の記憶が無いからね。同族嫌悪って言うのかなあ。彼女の事が好きなのに、酷く憎い」

聖良「好きなのに……？」

葉月「うん。
俺の本当の父親はとある異国の一族の1人で、ある男の欲のために一族ごと滅ぼされたって、今の義父さんから聞いてる。
後は、死んだ本当の母親が日本人で、今の義父さんとは大学時代の知り合い。俺の「誠(マサト)」って名前が本当の名前じゃないコトくらい」

聖良「……恨んだりとか、しないんですか？」

葉月「恨む？」

聖良「本当の父親を一族ごと滅ぼした人をです。それが原因で、お母様も亡くなられたんじゃ……」

葉月「……薄情な人だって思うかもしれないケド、俺は別に本当の両親とか過去のコト、どうだってイイんだよねえ。気にしてる方がしんどくなっちゃうコトって、あるデショ？」

聖良「それは、そうですけど……」

……じゃあ、はー君は何でそんなに苦しそうなの……？