氷と雷が描くイナイレ界part3 (ページ39)

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聞きたい事ページ39

輝莉「へぇ〜、雰囲気結構好きかも！」

客間に入るなり内部を見渡す輝莉。

大きいローテーブルには、客用のちょっと高そうなお菓子がカゴに盛られており、埃ひとつ無い床の間の右には書院棚がある。

和室と言われて大半がこれを想像するかもしれない見た目だ。

橘「こちらでお待ちください！すぐリクさん来ますので……」

瑩「私、お手伝いします」

橘「へっ！？」

荷物を先に壁際の床に下ろすなり、瑩は率先して橘が閉じようとしていた障子をやんわりと押さえる。

距離の近さに動揺した橘の顔が僅かに赤くなり、後ろへ千鳥足みたいな動きで距離を取る。

橘「そ、そそそそんな！愛利さんのお手を煩わせるなんてできません！あなたもリクさんのお客人ですし！」

……エイリさん？

瑩「では、考え方を変えましょう。私はつい最近までリト様のご実家で使用人として働いておりましたが、今はセイラさんの家で働く使用人です」

橘「え、リーダーの兄貴の……？」

瑩「紅月組の構成員とは似た役回りですし、言わば同等の立場の人間ですから、手伝うのは当然だと思いませんか？」

橘「……そういえば、愛利さんの好きにやらせてやれってリクさんも言ってた気がします。……わかりました。じゃあ、手伝ってもらってもいいですか？」

瑩「はい」

カヤ「あ、お構い無く〜」

一礼して障子を閉じる瑩に、カヤがひらっと手を振って見送った。

障子の向こう側で何故か左右別々に動く人影だったが、どうやら屋敷の内部を覚えきれてない橘が間違って戻ろうとしたのを瑩が止めて、逆に橘が案内させられるという事になっていた。

……何故か瑩さんは壁……というか障子に手で触れながら移動していた。

聖良「なんか面白い人でしたね、橘さん……」

葉月「あの人は最近紅月組に入ったばかりの新人だねえ」

チトセ「いや、だから何でお前がそんな事を知ってるんだってば」

葉月「ふふっ……何でだと思う？」

聖良「……あの、はー君」

葉月「うん？どうしたの、舞川さん」

聖良「少し聞きたい事がいくつかあるんですけど……」

葉月「イイよ。何が聞きたいの？」

聖良「その、瑩さんなんですけど……」

何故か言いづらそうに警戒気味に口籠る聖良。

そんな彼女の様子を察したのか、葉月が助け舟を出した。

葉月「瑩さんがいくら地獄耳だからって、遠くにある台所からなら聞こえたりしないよ」

それを聞いて安心したのか、聖良は住処で何となく聞こうと思っていた事を口にした。