氷と雷が描くイナイレ界part3 (ページ38)

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客間に案内ページ38

若干圧倒されながらも、聖良と輝莉が名乗る。

虎太郎「空港ではあざっした。舞川さん、星野さん。俺はリクさんの舎弟で虎太郎言います。以後宜しゅう」

希京「同じく舎弟の希京って言います。よろしくお願いしますね。舞川の姐(あね)さん、星野の姐さん！」

輝莉「姐、さん……」

……あ、やばい。輝莉に「女の子」という言葉は禁句なんだよね。

姐さん、なんて遠回しに女の子呼びされてるようなもの……かな。

輝莉「こ、こちらこそ……っ、よろしくお願いシマス……っ」

怒ってるけど、引きつった笑顔で言葉を返す輝莉。

これもギリギリ禁句だったか……。

ていうか自分の唇を血が出る強さで噛んでるから顔すごい事になってる……。

リク「あ、皆さんは先に家に上がってて下さい〜」

カヤ「うん？シノギの話？」

リク「そうなんです。あの空港で遭遇した通り魔が頑なに借金返さないって言うんで……」

チトセ「皐月、あんまり仕事の話を口外するのはどうかと思うぞ……？」

リク「あっ、そうですよね！失礼しました」

葉月「じゃあ、お言葉に甘えて先に部屋に上がってるね」

チトセ「いやお前は初めて来たんじゃなかったのか？」

リク「橘。チトセさん達を客間に案内してやってくれ」

「あ、はい！わかりました！」

橘と呼ばれたさっきの人が背を正して返事をし、聖良達に駆け寄って屋敷の中を先導する。

屋敷の大きさに比例して玄関も広く、スリッパが人数分段差の上に並べられていた。

橘「こちらです……！」

緊張しているのか、橘さんはどこか固さを感じる動きで聖良達の前を歩いていた。

輝莉「……おぉ〜、見て聖良。庭すげー広い！」

カヤ「これ、池泉回遊式庭園って言うらしいぜ」

聖良「ちせんかいゆうしきていえん？」

チトセ「簡単に言うと、大きな池を中心にして、園内を回遊して観賞する庭園の事だな」

葉月「皐月様のご実家は土地がまず広いからねえ。庭園もそれに比例して大きい。
木々や石、池や水路といった自然のものが多いから聖羅ちゃんが気に入ってるんだよ」

瑩「セイラさんが、ですか……。いつか、ちゃんと見てみたいものです」

……？瑩さん、見るなら今見れば良いのに。

しばらく見通しの良い廊下を進んでいると、橘さんが足を止めて障子(しょうじ)を開け、「ど、どうぞ！」とやはりどこか固い、けど礼儀正しい口調で言った。

そこは小綺麗な客間で、淡いオレンジの照明がいい感じに落ち着いた一室だった。