氷と雷が描くイナイレ界part3 (ページ35)

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しつこいページ35

瑩「…………」

途中から呆れて物も言えなくなった瑩は、最終的に無視してゴム手袋をした手で着ていた黒いベストの手洗いを再開してしまった。

聖良「質問！瑩さんの好きな食べ物は何ですか？」

瑩「…………」

それでも話題を振るのをやめようとしない聖良。

……そんな彼女に、瑩は洗剤に浸かったベストを握って苛立つ様子を隠さなかった。

聖良「はい！瑩さんは──」

瑩「うるさいですね。言葉を交わしないのなら皐月様達としてきたらどうですか」

スポーツゴーグルの大きめのレンズでわかりにくいけれど、瑩の目には嫌悪の色が写っているように見えた。

瑩「私はあなたと会話をする必要性を全く感じません。今度無駄口を叩くようでしたらこの洗剤をあなたに無理矢理飲ませます」

聖良「…………」

瑩の静かな怒りに、聖良は思わずとも黙ってしまう。

そこまで嫌だったのか……。

輝莉「……聖良、戻るよ。やっぱこんな人と会話するなんて無理なんだよ」

聖良「……うん」

せっかく諦めたくないと思えたのになあ……。

とぼとぼとバスルームから出ようとした途端。

聖良「うわっ？！」

何も無い所で足を滑らせてしまう。

やばい、頭打つ……！

聖良が身構えたその時……ふにっと柔らかい感触が後頭部にした。

あれ、痛くない……？

目を開ければ、僕は瑩さんから素手で両肩を支えられていた。

って言うかゴム手袋、一瞬で脱いだのか……。

瑩「全く。しつこい上に落ち着きが無いとは……どうしようも無いですね。ますますセイラさんがあなた達を入団させたのか理解し兼ねます」

輝莉「あたしも含むのかよ。あたし何もしてないのに！」

聖良「あ、ありがとうございます……」

瑩「ここで転んで怪我でもされたら、叱られるのは私ですので」

パッと手で軽く肩を押されて、聖良は直立の重心を取り戻した。

そのまま瑩は何事もなかったかのようにゴム手袋を再度手に嵌め直す。

輝莉の愚痴を聞きつつ廊下を歩きながら、聖良は瑩の事を考えていた。

輝莉「最後の最後まで発言が失礼なヤツだったな〜瑩さんって。逆に何で空さんはあいつを仲間にしたのかわかんないわ」

聖良「…………」

自身の後頭部の、柔らかい感触。

身長差から言って、僕の頭は瑩さんの胸くらいの位置になる。

男性の胸板にしては、柔らかかった。

……まさか。瑩さんって、女性……？

…………。

……本人に聞いたら聞いたでまた怒られそうだから、黙っておこう……。