氷と雷が描くイナイレ界part3 (ページ14)

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持て余すページ14

聖羅「…………」

「セイラ」

皆に混じらず、窓の外を眺める聖羅に黒髪が話し掛ける。

聖羅の手に持たれたグラスの中で、琥珀色の液体と丸い氷が揺れる。

振り向かない聖羅の頬を、黒髪の人は手の甲を当てた。

「自然に触れて満足か？」

聖羅「ここの海は澄んでるかんな。濁りが無い」

「……そうか」

黒髪の人の手が、手の甲で触れる動きから指で鎖骨をなぞり、髪の房を手で掬って親指を動かす。

聖羅「おっ、い……、……髪はやめろ」

「あの小さいのといて腑抜けになったか？」

聖羅「アンタそれ、わかっててやってんだろ」

「…………」

内心気に食わないのか図星なのか、黒髪の人はグラスをさらってテーブルに置いてから、聖羅の腕を強引に引いて軽々肩に担ぎ上げた。

聖羅「……、おい」

チトセ「ちょっ、何をやってるんだあんたは！」

黒髪の人の行動に呆れて気のない声を出すと、いち早く気付いた柊がぎょっとする。

「俺のものを俺が扱って何が悪い」

チトセ「ショウを下ろせ。というか、ショウは物じゃない！」

「貴様の指図は受けん。……行くぞ」

聖羅「返事しなくたって、アンタはいつもベッドに運ぶつもり、なんだろ」

挑発気味に言ってみるが、黒髪の人から聞かずとも答えはわかっていた。

所詮黒髪のこの男といるのは、聖羅にちゃんとした相手が見つかるまでの単なるじゃれあいの延長線、みたいなものだ。

柊が横槍を入れられる筋合いは無いし、気にされる謂れもない。

なのにも関わらず、柊は聖羅とこの男の密接とも言える関係に口を出してくるのだ。

そうこうしている内にも、黒髪の男は聖羅を肩に担いだまま連れてリビングからいなくなってしまう。

聖良「何だか、チトセっちって空さんのお母さんみたいですね」

カヤ「…………。いんや、あいつのオカンとかあり得ないから」

聖良「……？」

ノリの良いはずの水狂言の口からは、低い声で嫌悪してるような声だった。

……意外だ。彼なら開口一番に「それな～」とか軽く言いそうなのに。

＊

聖羅「…………」

ベッドの上にゆっくり下ろされて、黒髪の人は部屋のカーテンを閉じ、ドアを施錠する。

聖羅「またやんのかよ……」

「嫌じゃないだろう？」

聖羅の覆い被さる男は、拒否しないのをわかっててそう言う。

もちろん、聖羅も敢えて拒まない。

聖羅「……まーな」

男の首に両腕を回し、2人してベッドに身を沈めた。