♯4 ページ35
少し強い夜風が、肌に刺さる。
窓枠に立って拳銃を無言で此方に向けているAは、微動だにしない。
だが…少し様子が変だ。
グ「…A」
問い掛けても何も返してこない。
ただ俺を真っ直ぐ見つめている。
その目に、光はない。
貴「…グルッペン総統閣下。私は貴方を、
殺しに来ました」
グ「…そう、か…」
淡々とそう言い退ける。
…可笑しいな。
拳銃を突き付けられてる筈なのに、落ち着いている。
A。お前に殺されるなら、俺は別にそれで良い。
それほどまで、心からお前を愛している。
だが、最期に確認させてくれ。
グ「…なぁ、A。今のお前の姿は、本当に望んでいた姿か？」
お前にとって俺が、一度も仲間として見えなかったのなら、俺は素直に死のう。
だがほんの少しでも俺を仲間として見てくれたなら、仲間に拳銃を向けている姿が、お前の望んだ姿なのか？
貴「…質問に答える理由がありません」
グ「答えろっ、…」
低く縋るような声で訴える。
グ「お前にとって、それは幸せか？誰かにそう聞かれて、胸を張ってそう言い切れるか？！」
情けなく、涙を浮かべながら、必死に問う。
グ「少なくとも俺はっ、笑顔を失ったお前を見て、幸せになんかなれんかった…っ！！」
貴「ｯ」
俺はお前の意思を尊重した。
お前がまだここに戻れないと言うなら、戻ってくるまで待つつもりだった。
でもそれは、笑顔を失ったことが、Aがやりたかったことなんか？
グ「俺はお前の事が好きだっ！」
貴「ｯ、…なん…で…」
グ「は？」
貴「なんで今更っ！そんな事言うんですか！！」
涙を流しながら、そう叫ぶように言ってくる。
ｶﾁｬ…ｶﾁｬﾝｶﾁｬﾝ
拳銃が床に落ちて足元まで転がってくる。
それを遠くに蹴飛ばした。
貴「…私が、やらないと…グルさんが、もっと、酷い目に会うからって…だから、私が、殺しにいけって…やっと、決心が、ついたのにっ…？！」
Aの腕を掴み、手繰り寄せた。
バランスを崩したAは、俺の腕に飛び込んでくる。
グ「…ばか、だな…お前は…A、戻ってこい…お前が居るべき場所は、そこじゃない。お前の居場所は、ここだろ…？」
Aは、泣き出してしまった。
まるで、子供のように。
すまない。こんな世界と無縁だったお前を、巻き込んでしまって。
どうかこんな俺を、
嫌いにならないでくれ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 371人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまだぬき - 生まれて初めて小説で号泣しました…（；ω；）一番大好きです！！ずっと応援します！！（因みに１日で全部読みました←） (2019年6月9日 20時) (
レス) id: 38006c9f1d (このIDを非表示/違反報告)
trap(プロフ) - ソフィアさん» 私も好きです。(唐突返し←) (2019年5月19日 2時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - 好きです。(唐突) (2019年5月19日 1時) (レス) id: 9f5b306141 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - trapさん» また暫くしたら初めから読みたいと思います！まだまだ読みたいなと思い続と書かれているのを見る度ガッツポーズでした！ (2019年5月14日 10時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
trap(プロフ) - すみれいんさん» こんなくそ長い小説をここまで読んで頂きありがとうございました！お仕事中も脳内を支配できたならこちらとしても嬉しい限りです( ＾∀＾) (2019年5月12日 13時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
