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＿＿＿思えば何処か、常に欠けていたのだ。
それは家族の冷淡かもしれないし、俺の冷淡かもしれない。
只常に、「俺の居場所は此処では無い」「何かが足りない」と、自らの周囲に並べられた要素の小瓶を脳内に並べて見せては、何が足りない訳でも無いのにと嘆息する。
俺と言う人間を認めてくれる集団の中に属して居ながら、第一コミュニティがこの惨状だからか、如何も何かが違うと、思ってしまって居るのだろうか。
じっと考え込んだ違和感は靄の様に掴めないのに、常に傍に居る様な感覚があった。
.
.
かちり、かちり。
秒針の音が、やけに響く。
しゃらしゃら、鎖が擦れる音。
銀の錆びた懐中時計。
＿＿＿あの瞬間、彼奴の魅せたあの微笑程に、あの世界で価値のあるものはなかったのではないかと、思うのだ。
例えば世界の貴金属や宝石と言う名の付く全てを集めても、人類の宝とも言うような職人に手づから何か作らせても、あの美しき価値には遠く及ばないと思うのだ。
彼奴には、伸ばした手を取る気なんてなかった。
誰よりも非がない御前を、俺達は罪滅ぼしにでも逃がすべきだった、そう言う立場だった。
でも彼奴が選んだのは、俺達を薄暗闇に取り残して行く事だった。
一体人間ならば恐れずにはいられない、爪先の触れてしまえば飲まれる様な如何し様も無く昏い闇を、独り行く事だった。
心底下らない事だと、そう言えば良かったのに。
俺達に、その瞬間、価値はなくなったのだと本気で思った。
ああも綺麗な女に、孤独を選ばせてしまうような不甲斐の無さを、暗愚を本気で呪った。
お前はだって、俺達の手を二度も取る程、阿呆じゃないじゃないか。
それで良い、そうでなきゃならない、なのに違うと、俺は、
＿＿＿
.
.
＊＊
＿＿＿＿齢を経るにつれ、段々とその違和感は強くなった。
例えば、適当に街を歩いている時、金髪を見ては目で追って、染め抜いたそれに苛々するなんてこともしばしばあった。
赤い布裾を探していた。
横をさっと抜けるバイクに何か感じていた。
言い出せばキリのないそれは現実として確かに邪魔で、常に俺はそれを脳の奥底に圧縮して押し込んだ。
「大人」という肩書が贈られた時、俺が最初にやった事と言えば煙草であった。
酒の方には惹かれなかった、只煙草は、「こうだった」と確信的な程体に馴染んだ。
たらたら大学に通って、日を消して。
そして、見付けた。
＿＿輝くばかりの、あの金髪を。
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遥彼方 - 杏月さん» コメント有難うございます。赤の件、伏してお詫び申し上げます。私としてもあの作品を仕上げられないことはとても残念です。天使の方はきっと最後まで持っていこうと思いますので、これからもお付き合いの程宜しくお願い致します。 (2022年3月18日 20時) (
レス) id: db6f42df22 (このIDを非表示/違反報告)
杏月 - 青の頃から白、赤と続けて拝読させて頂いてます。赤の件悲しすぎてコメント(気恥しいので非ログですが)してしまいました。天使の連載楽しみに待っていますので今後もご自身のご都合を優先しながらゆるゆると書いて頂ければなと思います。陰ながら応援し続けております。 (2022年3月17日 18時) (レス) id: 2c2cf1c18b (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 零空さん» いえいえ、此方こそリクエスト有難う御座いました。満足頂けたようで、本当に何よりでございます。そう仰って頂ければ私の中では成功です、お褒めの言葉有難うございます！応援の言葉、確かに胸に刻ませて頂きました。之からもお付き合いの程宜しくお願い致します！ (2020年4月5日 0時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
零空 - リクエストに応えて下さり有難う御座いました。私はとても満足しました！厄介なお願いだったにもかかわらず短期間で、然も私の想像をはるかに超えた内容で吃驚です。上から目線になってしまいますが、次回作楽しみにしています。これからも頑張ってください！ (2020年4月4日 21時) (レス) id: 504800a470 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» お久しぶりです、コメント有難うございます。否ぁ、天使の時計人気ですね、吃驚しました。予想以上の反響で嬉しいです。有難いお言葉を有難うございます！プロット練ってみようかなと考え中です……（単純） (2020年3月26日 2時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2020年3月6日 10時
