『G』−１７ ページ4
「……そうですか」
私は、仕事時と同じ、感情の殆どない相槌を打った。
別に変な処はないし、突っ込んだ事を聴いても仕方がない。一応は同じチームなのだから。
今回あの激しい戦闘から、陰からとは言え私を遠ざけてくれたこと自体有難い事だし、少し珍しい事なのだ。
勿論、普段から私の事を扶けて下さってはいるのだが。
「あれ、疑うとるん？ 心外やなァ」
唇をわざとらしく尖らせるので、「同じチームです、別に嫌疑何てかけませんよ」と、返す。
子供をあやしているようで、こんな所を見られていては大変不本意だ。まァ、こんな事はいつもの事ではあるのだが。
そして其処で漸く、未だ解放されていない片手に気付くのだった。
「……」
態々「離せ」と言うのも面倒で、その儘にしている。
ゆったりとした、沈黙。
インカムの先では、御喋りと戦闘音が入り乱れていて、片耳だけ鼓膜が痛い目に遭っていた。
「……なァ、A」
「はい？」
ふとした声が、沈黙を破った。
と、思えば。
「！」
解放されていない片手をグイ、と引いた。
急な体重移動に殆ど反抗する気を出す暇もなく、私の身体はいとも簡単にバランスを崩し、鬱様の方に傾いた。
彼はその儘ぺしゃ、と崩れるように座って、私もそれに自然引っ張られる。
私は膝を付く直前、咄嗟に目の前の壁に片手をつくが、壁と私の間には当然、鬱様が居る訳で。
ざ、と、片手に握られて居た拳銃が、地に落ちる。
……近い。
この女慣れしている我が上司の方はどうか知らないが、私は別に恋愛的な面で男慣れして居る訳では無いのだ。
然も箆棒に顔が良いと来た。本当に自重して頂きたい。
尚、片手が離される素振りは未だないと言っておく。
「……あ、の」
取り敢えず口を開いたが、何か言いたい事がある訳でも無く。
強いて言えば、と、手を放してくれるよう言おうとすると、それより先に、
「……なァ、A」
と、鬱様の方が口を開いた。
そして、未だ解放されない私の手に、銃を握らせる。
ガバメント。私の銃ではない。
……鬱様のだ。
私は鬱様を見遣るが、彼は次に、私のホルスターの方に手を伸ばし、一つ、銃を抜き取った。
愈々何がしたいのか解らない。
彼は読めない笑顔でにこ、と笑って、
「一緒に死の？」
「……は？」
思わずこんな間抜けな音が出たのは、赦して欲しい。
何を言い出すかと思えば、と、呆れた目で見遣ったが、彼はやはり笑っているだけだった。
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遥彼方 - 杏月さん» コメント有難うございます。赤の件、伏してお詫び申し上げます。私としてもあの作品を仕上げられないことはとても残念です。天使の方はきっと最後まで持っていこうと思いますので、これからもお付き合いの程宜しくお願い致します。 (2022年3月18日 20時) (
レス) id: db6f42df22 (このIDを非表示/違反報告)
杏月 - 青の頃から白、赤と続けて拝読させて頂いてます。赤の件悲しすぎてコメント(気恥しいので非ログですが)してしまいました。天使の連載楽しみに待っていますので今後もご自身のご都合を優先しながらゆるゆると書いて頂ければなと思います。陰ながら応援し続けております。 (2022年3月17日 18時) (レス) id: 2c2cf1c18b (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 零空さん» いえいえ、此方こそリクエスト有難う御座いました。満足頂けたようで、本当に何よりでございます。そう仰って頂ければ私の中では成功です、お褒めの言葉有難うございます！応援の言葉、確かに胸に刻ませて頂きました。之からもお付き合いの程宜しくお願い致します！ (2020年4月5日 0時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
零空 - リクエストに応えて下さり有難う御座いました。私はとても満足しました！厄介なお願いだったにもかかわらず短期間で、然も私の想像をはるかに超えた内容で吃驚です。上から目線になってしまいますが、次回作楽しみにしています。これからも頑張ってください！ (2020年4月4日 21時) (レス) id: 504800a470 (このIDを非表示/違反報告)
遥彼方 - 桜舞姫・蝶月姫さん» お久しぶりです、コメント有難うございます。否ぁ、天使の時計人気ですね、吃驚しました。予想以上の反響で嬉しいです。有難いお言葉を有難うございます！プロット練ってみようかなと考え中です……（単純） (2020年3月26日 2時) (レス) id: b1e6400f22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥彼方 | 作成日時：2020年3月6日 10時
