【d!】As you wish【短編集】 (ページ9)

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それはいけない【gr】ページ9

その感情と向き合ってはいけないと、私は知っている。

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「姉さん」

いつの間にか声変りを終えて低くなった声が私の鼓膜を揺さぶる。なあに、と呼んでいた雑誌を閉じ声が聞こえた方向へ顔を向けると私の弟であるグルッペンが柔く微笑んでいた。部下たちに向けるものとは違う種類の笑みに小さく胸が跳ねた。

「…今日は、どうだった」

私の背も悠に越してしまい、筋肉が程よく付いた腕が私の後ろの背凭れに回された。大きめに開かれているシャツから鍛え上げられている胸板が見えた。色っぽくなったなと現実逃避。

「貴方の部下の人が皆優しくて、退屈しなくてたのしかった」

今日の出来事を思い出し笑う。今日の私係の人はトントンと鬱先生だった。二人の掛け合いは見ているだけでも楽しく、久しぶりに手を叩いて笑ったものだ。そう伝えればグルッペンは複雑なのか少しだけ眉間に皺を寄せた。
私は眉を下げてグルッペンの眉間に手を伸ばす。そのまま指先で皺をぐりぐりと伸ばしてあげる。

「…どうしたの」
「姉さん。」
「何？」
「好きだ」

何度目かわからない彼の告白。最初こそ私は戸惑ったものの、二桁を超えたあたりで慣れてしまった。何時もと同じように、私は口元を笑顔のままキープして口を開く。

「私たちはね、家族なの。姉弟。グルッペンが感じているそれは、ただの家族愛よ」

ちくりちくりと痛む胸。それに気づかないふりをしつつ私は繰り返した。グルッペンは悲しそうに眉を下げた。何度も繰り返したこの行為は、いつの間にか体に染みついてしまった。手をグルッペンの頬に寄せる。傷一つ無いきれいな肌から、昔の彼を思い出すことはできない。

「しかし姉さん、貴女は一つ重要なことを忘れている。」

え、と体が固まるのが分かった。何時もはここで終わったのにとイレギュラーな展開に脳が付いてきてはくれない。
グルッペンに、手を掴まれた。私を気遣うように加減された力加減ではあるもののびくとも動かない。

「姉さん、」

訴えかけるような声が、私に現実を突きつける。

「俺は、」

「駄目、それを言っては駄目…」

片方の手だけで耳を塞ぐ。顔を下げて目を背けてもグルッペンは覗き込んでくる。紅い瞳が私を射抜いた。

「…俺達は、義理の姉弟だ。血縁関係は、ないだろう」

どこか勝ち誇ったような声がはっきりと聞こえた。聞こえてしまった。

「やめてよ！！」

ギュッと目を瞑り、私は現実逃避でもする様に過去に思いを馳せた。