44 ページ45
連れて行かれて､乗せられたのは暗い色のトラック｡
外に出て気付いたが､夜になっていてどれだけ眠っていたのかが分かった｡
「…殺されんのかな」
「…わからん｡でも､多分大丈夫だ」
暗く､狭い所なので蒼哉にお願いして目を閉じていさせてもらった｡
パニックにならないように｡
そして弱みを見せないように｡
「殺されないと思うけどねえ」
「…沙那」
「違う､僕はジェットだ」
その声は､酷く冷たくて､悲しく聞こえた｡
「…どうして､こんな事を…」
「…君らには関係ない」
少し間を空けてさ､ジェットは答える｡
どうやら､訳アリのようだ｡
だが､許される事では無いのだろう｡
「…君の家族が可哀想だね」
「…はぁ？」
ドスの効いた声が此方に向く｡
蒼哉は､何となくだけど面白がってると思う｡
「罪を犯してまで生かして欲しいなんて誰も思わない｡だったら正規に働いた金で養って欲しいと思うけど」
「何がわかんの？君らは貧困なんて味わった事無いでしょ？」
狂気に満ちた無表情で､ジェットはこちらへ詰め寄る｡
気配がした｡
どんな顔をしているから知らない｡
「貧困は無いけど､恐怖､痛み､絶望ならあるよ」
「は…？」
「狭い地下牢みたいな所で､毎日毎日､暴力､暴言､罵倒を浴びせられて､死にたいと思っても死ねなくて､早く楽になりたかった｡なのに､眠って起きたら次が来ていて､それはずっと続くんだって絶望した」
蒼哉の手が俺の手に触れた｡
俺は､狂っているのかもしれない､不安や恐怖で｡
ソレを語っても､今は何も感じていない｡
「でもね､閉ざされた扉が吹っ飛んで､光が差し込んだんだ｡温かい､光だった｡そして､覚えていないけど､優しくて､暖かい人達が救い出してくれた」
「…」
「だから､俺はね､ジェット」
ゆっくりと､閉じていた瞼を開ける｡
薄暗い中､ジェットの驚いた顔が見えた｡
「絶望はもうしないよ｡だって､あの人たちがいる､そして隣には蒼哉がいる､こんなに心強いんだ､絶望なんてしてる暇あったら､どうやって君らを出し抜くか考えるよ」
「…無理に､決まってる｡だって､願ったって…」
叶う筈がない｡
そう､小さくジェットは呟いた｡
その姿が､泣いている子供に見えて､俺は鎖が付いたままの両手を差し伸べた｡
「ジェット」
「むり､だ､逃げられない､守らないと､あいつらを」
「おいで､ジェット」
ふらふらと､ジェットは俺に近寄ってくる｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
東の番長(プロフ) - オリジナルフラグは外してます (2019年3月11日 23時) (
レス) id: 5e10ec5b24 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年3月11日 22時) (レス) id: 1d0a45b264 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東の番長 | 作成日時：2019年3月11日 22時
