【短編集】きみばっかり、ずるいよ。【d!】 (ページ4)

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#03 魔法少女×os ページ4

※死ネタ注意

ダメ、甘い。
甘すぎる。余りの甘さに倒れそう。否、もう倒れていた。それでも無理矢理にでも起き上がらねばならなかった。彼から逃げなければいけないのだから。

『ふ、遅いんとちゃう？』

余裕のある笑みで此方に微笑みかけてくるものだから、口の中の血の味さえも甘く感じそうになる。何その錯覚、と自分自身を疑いたくなる。これがいちごのジャムだったらどれほど良かったか。

『なあ、なあ!!』

狂ったように声を荒らげる男が放った矢が私の肩に見事命中し、そのまま近くの壁に磔になってしまう。じんわりと辺りに血溜まりができる。見慣れすぎてしまったその光景に意識が飛ばされそうだ。慣れる、なんて初めは嫌だったのに。

『…アンタさ、自分でこの状況分かっとるよな、さすがにアホちゃうし。………あれ、ほんまに生きてる？もう死体なんとちゃうかな、これ。』

サッカーボールのように私に蹴りを入れようと右足を顔面近くまで上げたときがチャンスだった。残っていた力を振り絞り、思い切り肩を犠牲にしながらも逃げることができた。

「こ…ん、のクソ魔女…!!」

血反吐が出る。ウザったらしいあのふんわりした女みたいな髪も、やけに整った顔立ちも、私たちのこの関係にも、幼馴染みのあの子を思い出してしまいそうで嫌になる。彼と魔女はどこか似ているようで戦うことを躊躇いそうになる。

『っは、生きてたん？だったらちゃんと相手してもらわなあかんなあ、魔法少女さん。』
「ふざ、けん、な!!!!」

まだ痛む肩を抑えて魔力の足らないこのボロボロの身体を防御魔法に費やした。ただただはち切れそうになるが、今ここで粉々になるくらいなら魔法少女として命を断ちたい。こんなクソみたいな人生、ホイップクリームみたいで甘すぎたんだよ。

と、諦めて口角を上げた時だった。

『っ、なんやこれ!!』
「ははっ!!バーカ!!!!くたばれクソ魔女!!」

予め貼った罠にまんまと引っかかった魔女は死に至るほどの効果は無かったみたいだったけど、それでもみるみるうちに衰弱して変身が解かれたようだった。…そういえば、彼の真姿は見たことが無かった。まあ、それも当たり前といえば当たり前だったけど。どうせそこらへんの屑だろう。

「…、まん、ちゃ…ん…??!!!」

予想外だった姿に鼓動がうるさく鳴っている。そんなの聞いてない、待ってくれ、駄目なんだ、彼だけは。彼だけは。