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高校最後の夏休み。
眼前で落ちて行く彼女に手を伸ばした。か細く、折れてしまいそうな右腕はよくよく見れば酷い痣や首元には包帯が巻かれていた。
｢…離してよ、とんち。｣
『……なん、でや。勝手に…勝手に死ぬな!!!!!!!』
勢いに任せて汗が止まらず、怒号が口から飛び出す。なんでだ。なんでこんなことになっている。どうしても彼女の意図が読めない。こんなことをするような奴ではない。だとすれば、原因は、
｢うーん…バレちゃったね、この汚い身体。｣
目を俺から外し、下を眺めながら困ったように笑い、諦めたような顔でこちらを再度見つめた。その瞳に映る俺は酷く醜くて、嫌になる。
｢…物心ついた頃から、やったなぁ。あはは、もう痛くなんてないんだけどさ、お母さんもお父さんも散々痕を付けては終わってしまえば泣きながら謝るものだから、この人たちは私がいなきゃ何にもできない屑なんだなって思って、じゃあ、私が死んだら、どう、なるのかな、って。｣
細かく思い出す彼女の目の光が徐々に失われていくのに気付かない訳もなく、腕を握る手に力が強まり、拙くも声を出そうとする口が動く。
『俺、おれが助けるか…ッら…』
震えた声で自分でも情けない声が出てくる。
汗が腕まで伝り、今にも彼女を落としてしまいそうになる。何とかしなければいけない、そんなの嫌でも分かってる、だから何か言葉を紡ごうと必死に頭の中で考える。
｢じゃあ、このまま、落としてよ。｣
自分は、彼女のなんだったんだろう。幼馴染、友人、赤の、他人?いつも近くで笑いながら遊びに行ったり、話をした。気付くことなんていつでも、できた。救えない、自分では、彼女を助けられない。
『なぁ…一緒に、堕ちよか。』
ふわり、と宙に2人。
彼女は今までに魅せたことの無い笑みで笑いかけ、
「ねぇとんち、愛してるよ」
と俺の手を取り共に堕ちた。
白く美しい天使の翼が生えた気がした。
それは多分、たぶんだけど。
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堕ちる天使×tn
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作者名：匿名希望 | 作成日時：2019年8月15日 21時
