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そう決めたのに。
「A」
あのバリトンボイスが響き渡る。
…復活早すぎませんか。
ゆっくりと振り返れば、見覚えのある顔が。
『お久しぶり…でもないですね、総統閣下』
目に笑いを含ませ、反応する。
少しだけ睨まれた。
成る程、グルッペンは総統閣下と呼ばれることを嫌うのか。覚えておこう。散々使おう。
gr「来い」
拒否権無し。
溜め息を吐いて、グルッペンの後を追う。
『どうなさいましたか、総統閣下』
gr「その呼び方やめろ……頼む……」
『…それではグルッペン閣下とでも?』
gr「あー分かった!!好きにしろ!!!」
張り詰めた空気が緩む。
グルッペンも苦笑いを見せた。
『それで、どのようなご用件で?』
gr「あーーーーーーー…実は用はないんだ。」
…は?
用がないのに呼ぶとか…頭大丈夫かな。
gr「懐中時計、確かに受け取った。…だが、」
そう言い懐中時計を放り投げるグルッペン。
慌てて手を伸ばしキャッチする。
gr「これは、お前が持ってろ」
『…どういう意図で?』
gr「これからも、証拠になるだろ?」
まだ疑っているわけではないのは分かる。
どんな状況にあろうと、私がこれを持っていれば大丈夫、って言いたいんだろうけど。
『そのお気持ちだけ受け取っておきます。私は、貴方の宝物を持つ資格はありませんので』
gr「…そうか、なら仕方無いな」
あっさり諦めるグルッペン。
私から懐中時計を取り上げ、蓋を開ける。
gr「中、見たか?」
『いいえ、見ていませんが』
そう答えると、その状態の時計を見せてきた。
『これって、』
蓋の裏には、写真が貼られていた。
14人が楽しそうに笑っている写真が。
gr「お前が来た日、皆で写真を撮ったの覚えてるか?」
その時のだ、と懐かしそうに目を細める彼。
それを見て私は気づいた。
私の目が笑っていないことに。
『懐かしいですね、笑えてない私』
心の底から笑えていない私に笑いが込み上げてくる。作り笑いは得意だけど、目が笑えていないのは相変わらず。
gr「これも良い思い出だな」
『そうですね』
撮り直さなくてもいいかな。
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作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時