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「Aーーーー!!」
白昼堂々と正面から城に入る。
たまたまコネシマが入口の近くに居て、私の姿を見るなり叫んだ。
その声を聞き付けてあらゆる所から幹部が、兵士が。城の敷地内に居る人々が集まってくる。
『お久しぶりですね、皆さん。』
ヘーベアンが統治する国を出たのが2週間前。
グルッペンとの約束通りの日に戻ってきた。
それなのに、グルッペンの姿が見えない。
逃げ場なく囲まれたから話しかけてくる人たちの対応をしていると、重い足取りでこちらに向かってきたトントンが見えた。
tn「元気やった?」
『ええ、お陰さまで。それにしても驚きました、もう殆ど以前と変わりなくて。』
tn「だろ?頑張ったんやで、俺ら。…で、来て早々重い話をするようで申し訳無いんやけど。」
グルッペンが帰ってきて以来総統室に籠りきりで、だからといって仕事をしているわけでもなく、雑談には応えるけれど基本的に機嫌が悪い、らしい。
私はそれを解決する術を持っている。
彼が何故そうなったのかを知っているから。
『トントンさん、これを彼に渡して頂けませんか?』
tn「ん、良いけど?」
渡したのは懐中時計。
まだ、会うのは気が引ける。
だけど遠回しでも戻ってきたことは伝えないと。
これを見せれば信じる。
そう言っていたから。
tn「…分かった。取り敢えず今日は休んどき、明日からまた大変やで?」
…謹慎中のはずですが。
そう問う前に去っていったトントン。
ちょっと待て、謹慎期間、実は終わってる?
カレンダーを確認すると、今日で丁度1ヶ月だった。
私の欲しかった自由は一体何処へ。
きっとそんなことを考える暇もないほど忙しくなるんだろうな。
「A!!」
「A。」
「Aちゃん!!!」
沢山の幹部から名前を呼ばれ振り向く。
だからこそ、今日は。
最期の自由を、心赴くままに過ごそう。
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作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時