とある国の元書記長は非現実的な現実に遭遇しました (ページ29)

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私がこの国に来たとき、コネシマが持ってきてくれた物の中にあった傘を差して、二人で城を出る。

この国に来てからは久しぶりの雨。
本当は雨に打たれている方が好きなんだよね。
それで風邪を引いたことも何度かあって。

「どうして傘を持っていたのに差さなかったのか」って何回も訊かれて。

雨に打たれていると、自分が物凄く小さな存在に思える。国を統治していた頃は、特に。
色々なことで思い悩んでいたのが、雨に打たれて洗い流されている。そんな気がしていた。

『ちょっと、どこ行くの、』

城を出るなり有り得ない方向に曲がるショッピ。
その方向、森しかないんですけど。
しかも左手に何か荷物持ってるし。

syp「いいから、着いてきてください」

期待が少しずつ不安へ変わる。
実はショッピは何処かの国のスパイで、私を人気のない場所に連れていって殺そうとしている、とか。
そんなことが無いのは分かっているけど、例えば今一緒にいるのがグルッペンでもそう考えるかもしれない。

それくらい、私の思考はねじ曲がっている。

人を信じて失敗したら嫌たけど、人を信じないで失敗したら嬉しくない?…みたいな。

syp「もう少しっす、頑張りましょ」

雨の日に森を歩くって、その考えが間違っていると思う。
地面はぬかるんでいるし、私はいつも通り正装だし。

syp「その格好で息切れないなんて、流石っすね」

『まぁ、多少は訓練していたからね。でも流石って?』

syp「ヘーベアン云々の前、グルッペンさんと一対一やって、勝ったんでしょ?だからっすよ」

そんなこともあったっけ。あったか。

『あれは、総統が手を抜いたから、たまたま勝てただけ。実力で勝てたなんて思ってない』

いつかは勝ちたい、とも思わないけど。
ふーん、と言って無言で先へ進むショッピ。
私、何か変なこと言ったかな。

syp「ほら、着きましたよ」

其処にあったのは木造の家。
一応電気は通っているらしい。自家発電かな。

syp「久しぶりっすね、元気でした?」

…え、

「あっ………!!お久しぶり、です」

中から出てきたのは私より年下の女の子。
ショッピを見て驚いた後、私を見て更に驚く。

syp「あ、この人は俺の同僚っす。怪しい人じゃないんで安心してください」

その子は私を短時間観察し、自らの家に招き入れた。
私がそれに気づかない訳がないけど、見逃そう。