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基本的に雨が降らないこの国に、久しぶりに雨が降った。
雨が降らなくても必要な水の量は確保できるとかなんとかで、人々はこの国に憧れている部分がある。ウルカも、そうだったな。
syp「Aさん」
そんな日に、総統室に現れたショッピ。
グルッペンではなく、私に用がある人は珍しい。
『…どうしたの、ショッピ君』
一瞬喉から出かかった敬語を飲み込む。
そういえば、エーミールは敬語使いだったよね。
彼について、触れなくて良いのかな。
syp「いや、ちょっと」
特に用は無いんすけど来ました。
言わなくても分かる。
ショッピは仕事が早いし、量も多くはない。たから遊びに来たんだろうけれど、私は仕事中だ。
手元を見れば、今日のノルマはあと3割残っている。
ちらりとグルッペンの方を窺うと、彼はPCと向き合いなから、人が出来る速さとは思えない速度でキーボードを叩きながら、一言。
gr「別に良いぞ」
と。
『では、お言葉に甘えて。失礼します』
総統室から出て、ショッピの後ろを歩く。
syp「グルッペンさんには敬語なんすね」
『まぁ、…上司、だから』
こうして敬語を外すのも少しずつ慣れてきた。
最初はあまりにも敬語を外せていなかったから、コネシマが罰ゲームを作った。
その内容が嫌で嫌で仕方がなく、外さざるを得なくなった。その点ではコネシマに感謝しかない。
syp「罰ゲーム、適用されないんですか?」
『多分大丈夫。コネシマも理解があるから。ショッピ君も、それは思うでしょ?』
syp「……あの人、心無い言われてますけど、ね」
言い方がコネシマを擁護しているみたい。
良い後輩に恵まれたよね、コネシマ。
syp「俺、あんまAさんと話したこと無いから話してみたかったんすよね」
『奇遇だね、私もショッピ君と話してみたかった』
syp「ふはっ、奇遇っすね」
笑うショッピ君。
何処行こ、と呟きながら此方を見る。
syp「そうだ、ちょっと外出ません?」
『…雨だけど』
syp「雨だからっす」
雨だから、という言葉に引っ掛かる。
雨でしか行けないところがあるとか、そんな感じかな。
『期待していい?』
「勿論」
じゃあ、期待しようかな。
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作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時