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『お帰りなさい、グルッペン様』

こんな時間に私が訪れることを予想していなかった彼は、口を開いたまま固まっている。
そんな表情に心の中で笑いながら、それを表情には出さず。

『どうなさいましたか、間抜けな顔して』

とりあえず煽ってみる。
ムッとしたグルッペンはコーヒーを勢いよく飲み、カップを思いきり机に置く。

gr「……どうした、こんな時間に」

『貴方が帰ってきたと聞きまして。迷惑なら帰りますが』

gr「別に、迷惑ではないが」


全て不機嫌そうに答える。
これは……


『コーヒー、淹れますね』

こんな状態で、私の変化に気づくかどうか。
形だけの敬語で、一切の敬意を込めず。

それでも慣れた手つきでコーヒーを淹れ、グルッペンはそんな私を注意深く見ている。


gr「俺が居ない間に、何かあったな」

……………。

『さあ、何のことだか』

gr「惚けるな。俺が気づかないと思ったか」


鋭い視線を送られる。
…さて、どう答えようかな。

『仰る通りです。が、貴方に言う程ではありませんよ』

gr「そうかどうかは、俺が決める」

『そうだとしても、その前に私の基準があります』

gr「信じていいのか」

『勿論』


数時間前の、夕日のときを思い出す。
どうして、私は倒れたのだろう。

疲れているから、だけではなかったはず。


一気に多くの人に触れたから?
誰かが居る場所で、泣いたから?

分からない。
分からない、けど。


gr「随分と慣れたな」

『何にでしょうか』

gr「俺に、この国に」


やっぱり、グルッペンのこと、苦手だ。
全部知ってる。見透かしている。

『私、貴方のこと、心の底から嫌いです』


言ってしまった。
そんな私を、じっと見るグルッペン。

もう少し表情を変えてよ。
驚いたり、悲しんだり、怒ったりさ。


gr「…そうか、でも、俺は好きだぞ」









.









.









.









『そういうところが、大嫌いなんです。でも、』


…でも。


『……だからこそ、貴方の側を去る気はありませんから。覚悟しておいて、下さい』


約束したから。
夢とはいえ、グルッペンに。


gr「……そうか」

無愛想な声。
彼も何か思うところがあるのかもしれない。


『失礼します』


総統秘書として、彼の隣に居るべき人として。
今初めて、スタートした。

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作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時

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