26 ページ26
『お帰りなさい、グルッペン様』
こんな時間に私が訪れることを予想していなかった彼は、口を開いたまま固まっている。
そんな表情に心の中で笑いながら、それを表情には出さず。
『どうなさいましたか、間抜けな顔して』
とりあえず煽ってみる。
ムッとしたグルッペンはコーヒーを勢いよく飲み、カップを思いきり机に置く。
gr「……どうした、こんな時間に」
『貴方が帰ってきたと聞きまして。迷惑なら帰りますが』
gr「別に、迷惑ではないが」
全て不機嫌そうに答える。
これは……
『コーヒー、淹れますね』
こんな状態で、私の変化に気づくかどうか。
形だけの敬語で、一切の敬意を込めず。
それでも慣れた手つきでコーヒーを淹れ、グルッペンはそんな私を注意深く見ている。
gr「俺が居ない間に、何かあったな」
……………。
『さあ、何のことだか』
gr「惚けるな。俺が気づかないと思ったか」
鋭い視線を送られる。
…さて、どう答えようかな。
『仰る通りです。が、貴方に言う程ではありませんよ』
gr「そうかどうかは、俺が決める」
『そうだとしても、その前に私の基準があります』
gr「信じていいのか」
『勿論』
数時間前の、夕日のときを思い出す。
どうして、私は倒れたのだろう。
疲れているから、だけではなかったはず。
一気に多くの人に触れたから?
誰かが居る場所で、泣いたから?
分からない。
分からない、けど。
gr「随分と慣れたな」
『何にでしょうか』
gr「俺に、この国に」
やっぱり、グルッペンのこと、苦手だ。
全部知ってる。見透かしている。
『私、貴方のこと、心の底から嫌いです』
言ってしまった。
そんな私を、じっと見るグルッペン。
もう少し表情を変えてよ。
驚いたり、悲しんだり、怒ったりさ。
gr「…そうか、でも、俺は好きだぞ」
.
.
.
『そういうところが、大嫌いなんです。でも、』
…でも。
『……だからこそ、貴方の側を去る気はありませんから。覚悟しておいて、下さい』
約束したから。
夢とはいえ、グルッペンに。
gr「……そうか」
無愛想な声。
彼も何か思うところがあるのかもしれない。
『失礼します』
総統秘書として、彼の隣に居るべき人として。
今初めて、スタートした。
90人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒猫 | 作成日時:2018年9月13日 22時