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期待をしないか、って。
ここまで生きてきて、誰かを好きになっても恋をかなえてこなかった奴に、どうやって期待をさせようというのだ。
どこか含みのある先輩の声に、うわ、どうしようと思った。
A「そういうつもりじゃなかったんですよ。」
トントン「少しは期待しろや。お前も、あの小説に出てくる男も。」
どうしてかお説教モード？に入る先輩に頭を下げる。
トントン「もてる為に髭とか、全然リアリティないからな。それに、お前もお前で、10年間ためてきたんやろ、その言葉」
好きな人の顔は忘れる、名前も忘れる。
挙句闇金と勘違いする。
問題ばかりの自分に、言葉を失った。
トントン「そんなお前を忘れてなかった俺の身にもなってみろや」
A「すみません」
トントン「違う違う。謝らんで。そうじゃなくてな、あんなぁ…」
先輩の言葉がうまく噛み砕いて、呑み込めない。
この空気がどれだけ普段と違うか、今強く感じる。
A「どうかしたんですか？」
トントン「１０年会わないで、なんでお互いこんなに変わってないのか、自分でもわからんわ」
A「先輩も、変わってないんですか」
トントン「いや変わったで？ちょっと太ったし、趣味も増えて、友達も変わったけど、根本は変わってない。残念な話やけどな」
先輩は息を呑み込み、続けた。
トントン「結局俺も同じよ。お前と会って、何にも変わってない」
A「つ、つまり？」
トントン「作家の癖して読解力がないなぁ！！」
読解力というか、察することがニガテと言って欲しかった。その一言が、切実なものだとはわかったけれど。
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作者名：岡山
| 作成日時：2016年7月30日 12時
