四十三頁目 ページ47
宮香_。
Aside
期待を膨らませ医務室へ向かったものの、生憎不在だという事が即座に分かった。開けっ放しの、私より一回りも大きなガラスから吹いた突風が観葉植物と共に私の髪を踊らせる。
霜焼けで赤くなった手のひらを見ていると、余計に冷えきってしまいそうだったから私はげどちゃんの牧場を眺めていた。その隣では意味ありげに一輪の向日葵が逞しく上を向いている。
神を心待ちにしていた少時が過ぎた時に、廊下の空気が一変した。私は何の意図もなく咄嗟にナイフを手に取る。微かに視界に入った人は私を眺め、こちらへゆっくりと歩いていた。
何もできないまま見つめていると、人は既に私との距離を20メートル程に縮めている。人──男は暗い暗い瞳を細め口元を歪ませる。
「嬢ちゃん？ここは軍基地。こんな物騒な場所に君がいるのはおかしいのだよ。
……さぁついてきてごらん？」
思わず顔をしかめてしまいそうなぐらい気味が悪い、猫撫で声で私に問い掛けた。彼の髪はやけに綺麗な銀色に煌びやいている。祖国の軍人とはいえ、従う気にはならなかった。理由はよく分からない。
すると、対抗的な態度を取った私に、彼は罵声を浴びせながら私の細い腕を強引に掴んだ。
「ついてこいッてんだろォ！！ろくな言うことも聞けないのか？使えねェガキだなァ！」
『…………』
……いつの間にかナイフを手に取っていた右手には、尋常ではない力がこもっていた。痛くて、吐き気がして、苛々して、コイツから今すぐにでも逃れたかった。
『──離せ！！』
体は驚くほど流暢に動き、ナイフは彼に一直線に突っ切った。彼は尻餅をつき、化け物を見るような目で私を見る。
買って貰ったばかりの服には小さな赤い斑点が描かれていた。それについて、私は何もしなかった。否、何も出来ずに突っ立っていたのだ。
「ばっ……化け物っ……！！」
？「Aちゃん！？」
遠くから届いた声で私は現状が一瞬にして分かったと同時に、視界を閉ざした。あの日、煌々と燃え上がった炎の色みたいだったからだ。
？「……お前は拷問の前に処置だな。Aちゃん、」
『……っ帰るよ……ごめんなさい』
神に声を掛けてもらったにも関わらず、私はナイフを傍らに投げ捨て何かから逃げるようにして走った。微かに鼻を擽った鉄の臭いは、更に私を追い込んで行く。
ただ、声にもならない掠れた声で喘ぎながら血涙を流していた。
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宮香(プロフ) - Apricot02さん» あぷりん！！コメントありがとう！頑張るね！w (2016年11月17日 19時) (携帯から) (
レス) id: 52f2921e66 (このIDを非表示/違反報告)
Apricot02(プロフ) - 面白いです！これからも更新がんばってくださいね(* 'ω')ﾉあと、お気に入り100人おめでとうございます (2016年11月17日 18時) (レス) id: 6a83ea3325 (このIDを非表示/違反報告)
宮香(プロフ) - まっすーさん» コメントありがとうございます！(｀・ω・´)笑って頂けて幸いですwこれからもよろしくお願いします！！ (2016年11月5日 18時) (携帯から) (レス) id: 52f2921e66 (このIDを非表示/違反報告)
まっすー(プロフ) - UFOに乗せてもらえば良かったって大先生…w不意打ち過ぎたw (2016年11月5日 18時) (レス) id: e7189ac219 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 桜風瑠璃さん» おー、桜風ちゃんありがとう！いつもコメントくれてありがとうw続き、楽しみにしててくださいね！ (2016年11月3日 20時) (レス) id: 36e773549b (このIDを非表示/違反報告)
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