グレムリン・グリーン/zm ページ13
はあ、と一つ溜め息。
夜といえども夏は暑く、プラス残業含む仕事による疲れが積み重なった私の身体にこの気温は少々……いやかなり辛い。全く派遣社員にこれ程の重労働を課せるとは何たる所業。いやこの会社はまだいい方なのだが。
そして現在、会社のエレベーター内である。蒸し暑いことこの上ない。
まあ外に出たらちょっとはマシだよね、うん、そう願ってる。
「……あれ、」
ポン、と5の数字が点灯し、降下が止まる。……珍しい、こんな時間に誰かと乗り合わせるとは。疲れているのだからさっさと帰らせてほしい、なんて。
そんな毒づいた言葉、そのまま吐き出す訳にもいかないので結局口内で転がすだけになる。こういう小さな事でストレスというのは溜まっていくのだろう。
「………あ、A、?」
「え、ま、ゾム…?」
開いた扉から入ってきた男、視線があって、吃驚仰天。
嘘。うそ、うそうそ!!なんで此処で鉢合わせすんの…!?しかもエレベーター密室状態だし狭いし!
……うわぁ、いやだ。
「…どえらい久々やな、てか残業?」
「あ、うん。ゾムも?」
「この時間帯で残業ですらなかったら俺は今すぐにでも訴えんで」
「寧ろ訴えたい」
「それな」
はは、なんて笑うがその顔はどちらもぎこちない。そりゃそうだ、こんなところで元恋人とばったり会うなど誰が考えるものか。
……ゾム、と呼んだ彼は正真正銘ここの社員だ。私が派遣された当初は同じ部署で関わりが多く、尚且つ優しくしてくれる数少ない良識人だった。
しかし、今は会いたくない人ナンバーワンに輝く程の仲である。……まあ色々あったのだ。
「そういや最近機械壊してへんねんな」
「なっ…確かに度々壊してるけど自分のだけですー!」
「ははっ、あかんやん!……あと二週間か」
「へ?」
「いや、Aがおらんなるまで。半年契約やったんやろ?」
「………え、」
「あれ、間違っとったか?ほんならごめ…」
「い、いや合ってるよ!でも何で覚えてるのかなって、」
確かに今回の派遣期間は半年間。来週には頼まれていたもの全て片付く予定だが、期限は一応二週間後である。
二週間経ったら私は次の、別の会社へ派遣されていくのだ。
「なんでってそんなん…」
「…?」
「ずっと、気掛かりやってんもん」
それは耳を疑うような、というよゆ本当に疑ったくらいには思いも寄らない言葉で。
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