吠えろ IX ページ3
私の言葉に何も答えず、また敵軍のほうへと身を進めて行く彼を懸命に追う。
そんな彼が、足を引き摺っているのが見えた。
きっと自身の魔法にやられたのだろう。彼の纏う炎はもはや彼のものじゃない。彼の髪だって燃えて焦げて、地面に落ちている。
腕は焼けて、一部が爛れている。
「お願いシッマ!! 止まって!!」
私の魔法なら、彼を止められる。それは彼もわかっているはずなのに、彼はまだ止まらない。
アンタのその無駄に頑固な性格が、こんな死に際ですら発揮されるだなんて。
背を向けて歩く彼が、もう二度と私のそばに来てくれないことを考えて、視界が揺らいだ。
お願い、止まって。
私のそばで、みんなのそばで、その大きな声で、笑って。
その刹那、一つの銃弾が彼の引き摺る足を貫通したのが見えた。
ガクンと膝をついた彼。私は一瞬にして頭が冷えた。
そして直後、私の伸ばした手を射止める銃弾。
まずい、敵軍が無差別に攻撃を仕掛けているのだ。
それに気づいたシッマは、銃弾の飛んできたほうへと目を向けた。
そして、また足を引き摺って立ち上がって、今度はそちらへと足を向ける。
ごうごうと唸る炎は銃弾を放ったそいつを仕留めたようで、唸り声が響いた。
それと同時に、目の前で彼が倒れた。
「シ、ッマ……! シッマ!! シッマ、お願……い!」
彼の体から出て行く炎たちは威力を変えない。その炎たちは順調に、彼の体を蝕んでいく。
私もガクリと膝をついた。この間ずっと魔法を使っていたからか、体力が限界に近づいてきたのだ。
でも、そんなことで彼を救えないなんて、嫌だ。
半分四つん這いになりながら、倒れてしまった彼に近づく。
速く、速く、と自分に言い聞かせながら身を捩る。
そしてようやく彼の元に近づいて、倒れてしまっている彼を抱きしめた。
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うんちっち - 面白い 更新頑張って (2019年10月19日 23時) (
レス) id: 473868f78a (このIDを非表示/違反報告)
メビ(プロフ) - 久しぶりの更新ですね！これからも無理しない程度に頑張ってください！ (2019年7月28日 6時) (レス) id: ee2ddb04ba (このIDを非表示/違反報告)
いずも(プロフ) - 好きです尊い話好きすぎます！ (2019年7月15日 0時) (レス) id: e6422e1b57 (このIDを非表示/違反報告)
みふぇ(プロフ) - 好きです (2019年7月13日 1時) (レス) id: df5efd99d9 (このIDを非表示/違反報告)
hasuki- - 初めまして,この小説は時々シリアスを入れてくるから,私がある意味死にそうになりました。これからも頑張ってください， (2019年6月7日 0時) (レス) id: e55a71c11d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中沢 琴葉
| 作成日時：2019年5月6日 13時
