絵本【nisn】zoppi/karonさんﾘｸ ページ27
Aへ。
今日はお前に手紙を書く。
何だか、過去の話をしたくて。
何時もの様に城から遠出していると、他国や城下町には着かずに広い森林へ繋がった。
四季折々の花、飛び交う鳥、頬を掠める風。
思わず欠伸が出てしまいそうな程、暖かく居心地が良かった。
その時、遠くからかか細いすすり泣きが聞こえてきた。
俺が助けにいかないと消えてしまうのではないかという程。
近くを探すと、そこには巨大な樹木の根が絡み合い何かを護るように聳え立っていた。
その中にAがいた。
燻んだ白いワンピースに、手には血と膿で汚れた手袋。
そして何より驚いたのは、片足が無かったこと。
恐らく、国から逃げてきた姫か何かだろうと俺は察した。
迷った。自分の国へ連れて帰ろうか、それとも見なかった事にするか。
焦った気持ちを落ち着かせようと煙草に火を付け一口吸った時、ふと彼女はこう呟いた。
「その匂い、知ってる」
涙と土埃で汚れた顔で、静かに微笑んだ。
それからは衝動に任せていた所為でよく覚えていない。国へ連れて帰った事には変わりないけど。
グルッペンには驚かれたが、俺が面倒を見ると言うと案外通ったのでほっとした。
―――――お前との出会いは、現実味が無いほどに幻想的だった。
まるで絵本の世界にでも出てきそうで。
そのまま俺はお前に恋をした。
初めは緊張してたけど、他の奴らとも話せるようになって。
そして色々な世界を見せてあげた。
けれど、俺はここにAを連れてきた事に酷く後悔することになる。
欲望さ。
この手で人を殺め狂人のように笑い狂う姿を、お前にだけは見せたくなかった。
お前の過去は、きっとそれほど過酷で穢れた世界だったのだから。
宣戦布告当日、俺はお前に目隠しを付け部屋の鍵を掛けた。
燃え盛る炎と男達の雄叫び。
必死で戦った。
お前の為にも、忠誠を誓ったあいつの為にも。
けれどその気持ちは、鎮火した煙と一緒に溶けた。
俺は、戦死した。
また出会った頃へ戻りたい。
絵本の世界に飛び込んだようなあの綺麗な場所へ、お前の手を引いて。
言ったはずだ。
俺がお前の面倒を見ると。
いつか必ず隣に戻ってくるから、もう少しの辛抱さ。
だからそれまで、
その本のページを閉じていてくれないか。
兄さん
あの日助けてくれた事は忘れはしない。逃亡の途中で失くした足を、そっと擦った。
リクエストありがとうございました!
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Aの化身(プロフ) - 一つ眼さん» コメントありがとうございます。この作品はただ自分の体験談をメンバーに演じてもらっただけの物です。尊さに気付く事が出来た一つ眼さん自身が素晴らしいことです。同時に、そう気付けた貴方のお手伝いが出来て大変恐縮です。 (2020年3月8日 17時) (
レス) id: 5ef8288512 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - 同じ文を2つ書いてしまいました。お手数ですが1つ消しといてください (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - 下の続きです。 涙が止まりませんでした。命の尊さはこう言う事を言うのだなと思いました。Aの化身さん。私に命の尊さを教えてくれてありがとうございました。 (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - 下の続きです。 涙が止まりませんでした。命の尊さはこう言う事を言うのだなと思いました。Aの化身さん。私に命の尊さを教えてくれてありがとうございました。 (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - はじめまして。いきなりですが私は命の尊さと言うものを知りませでした。でも、この小説を読んでやっと命の尊さを知ることができました。推しが死ぬのがとっても悲しくて。推しじゃなくても、苦しみや悲しみを我慢してきたけれど限界だったり。 (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aの化身 | 作成日時：2019年1月13日 15時
