心臓【gr】 ページ18
拝啓、Aへ。
今日は恥ずかしながら、Aに手紙を書くことにした。
文章が非常に拙いのだが、読んでくれたら嬉しい。
数ヵ月前、心臓の病を患った。
今の医療技術では完治が難しいような難病であると医師から告げられた。
そして始まった闘病生活。
当たり前だが、そう容易い事ではない。
だが、少し楽しみも増えた。
それは一緒に病気と闘う患者と交流できること。
それからいつも決まった時間にAが見舞いに来てくれることが楽しみだった。
共に闘い、共に生きる。
今までにない経験だった。
そんな俺に吉報が届いた。
心臓移植のドナーが見つかった。
凄く嬉しかった。
もしかしたら治る希望が見えるかもしれないと。
けれど俺はそれを断った。
考えてみれば、その方は既に亡くなっている。
ドナーの動かしたエネルギーを、次は俺の身体を動かす事になる。
何だか俺にはその荷は重すぎた。
加えて、その健康保険証の裏には
「私の分まで使ってください」と書かれていた。
余計使う気になれなかった。
その臓器はかつてその人間を動かし続けた体の一部。
その人の血が流れ、生きるを支えた臓器を、俺は容易く使おうだなんて思えなかったのだ。
医師も困り果てていたが、察したのか笑顔に変わり
"残りの分までご自身の心臓で頑張ってみましょうか"と仰った。
人間、内臓や脳が止まれば思考もサイクルも止まる。
そうならぬよう休まず働いているのがこの心臓。
時に赤ん坊を落ち着かせる音を鳴らし、緊張や恋のリズムを刻む。
全身の血が辿り着いては血管を通ってドクドクと流れていく。
なくてはならないモノ。
だが病にかかってしまえば仕方ない。
代替品で埋めることなく、最期まで動いてもらうつもりだ。
A、お前にはその音が聞こえるか。
生命を繋ぐ音が。
いつまでもその麗しい心臓を、止めてはならない。
そろそろこいつも止まる。
中々傍にいてやれずすまなかった。
それでも俺を手放さずにいてくれたこと、本当に感謝している。
最期は、優しく見守ってくれ。
ではそろそろお暇しようか。
お疲れ様。俺の心臓。
グルッペン・フューラー
彼の胸ポケットには、折り紙で作ったハートが入っていた。
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Aの化身(プロフ) - 一つ眼さん» コメントありがとうございます。この作品はただ自分の体験談をメンバーに演じてもらっただけの物です。尊さに気付く事が出来た一つ眼さん自身が素晴らしいことです。同時に、そう気付けた貴方のお手伝いが出来て大変恐縮です。 (2020年3月8日 17時) (
レス) id: 5ef8288512 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - 同じ文を2つ書いてしまいました。お手数ですが1つ消しといてください (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - 下の続きです。 涙が止まりませんでした。命の尊さはこう言う事を言うのだなと思いました。Aの化身さん。私に命の尊さを教えてくれてありがとうございました。 (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - 下の続きです。 涙が止まりませんでした。命の尊さはこう言う事を言うのだなと思いました。Aの化身さん。私に命の尊さを教えてくれてありがとうございました。 (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
一つ眼 - はじめまして。いきなりですが私は命の尊さと言うものを知りませでした。でも、この小説を読んでやっと命の尊さを知ることができました。推しが死ぬのがとっても悲しくて。推しじゃなくても、苦しみや悲しみを我慢してきたけれど限界だったり。 (2020年3月8日 1時) (レス) id: 250339bac9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aの化身 | 作成日時：2019年1月13日 15時
