続き ページ33
･
･
･
｢では、ありがとうございました。カペラ様。申し訳ないですがお見送りはここまでで。…では｣
玄関までカペラ氏を見送る。満足な話ができたのだろう。なんと言っていたかもう記憶は無いが。体が中心から発熱している。視界に黒と白が混ざる。床がどこかわからなくなって、ドアが閉じると同時に体がぐらついた。
｢…おっと｣
｢…はぁっ！わる、い。ぁ。ごほっ！ん、んん｣
隣に立っていたしんぺいさんに腰を掴まれる。なんとか床にキスしなくて済んだが、目眩は治らないし、咳も出てきた。これは酷くなるパターンだ。しんぺいさんは私を横抱きにし、私の部屋へと向かった。
｢掴まっとって。はぁ。頑張りすぎは禁物よ｣
｢…ごめん…。しんぺいさん…｣
途中何度も止めようと言ってくれたが、あと少し、と話を聞かなかったのは私だ。怒られても何も文句は言えまい。移さないよう顔を背けてしんぺいさんの首に手を回した。
｢ええけど。寝とってな。暫く安静やでこれ。いいね｣
｢わかったぁ…。ありがとう、｣
｢ええよ。よう頑張ったね。えらいえらい｣
小さい頃と変わらぬ顔で、声で私を褒める。昔と変わらず、私を抱えられるのが、なんだか無性に照れ臭い。いつもなら子供扱いを指摘するが、そんなことはどうでもいいくらい褒められたことがただ嬉しかった。熱い体が、更にポカポカと暖まる。
｢…だよなぁ。わたし、がんばったよ｣
｢うんうん。頑張った頑張った。メイドさん、熱あるんでタオルと水用意してもらっていいですか。あと体拭くものと着替え。…うん、お願いします｣
揺らさぬよう丁寧に移動し、ベッドにゆっくりと下ろされる。額に当てられた掌は、驚くくらいに冷たかった。
しばらくは召し使い達のそれはもう手厚い介護を受けることになるのだろう。手のかからない私を唯一構えるチャンスだから、と昔から私が病気に罹ると彼女達は心なしか喜ぶのだ。非常に不謹慎ではあるが、非常に愛嬌があって、私は彼女らが好きだった。安心して全て任せられるだろう。
大きな手に心底安心して、私は眠りについた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 281人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
･=･ - 野蛮人と愉快な仲間たちさん» 了解しました。作品の投稿、楽しみにしております。 (2019年9月22日 11時) (
レス) id: 457d32d2b7 (このIDを非表示/違反報告)
野蛮人と愉快な仲間たち(プロフ) - ･=･さん» こちらこそありがとうございます！わかりました、一文程追加させていただきますね。今はまだ下書き中ですがイラストを描いていただいている方のイラストが出来上がり次第このサイトに投稿予定です。 (2019年9月21日 13時) (レス) id: af770bb773 (このIDを非表示/違反報告)
･=･ - 野蛮人と愉快な仲間たちさん» ご説明ありがとうございます。 そういう事でしたらご自由に使って頂いて結構です。ただし、パクリ疑惑を無くすためにも設定を借りている、等の一言を作品のどこかに記載して頂けると助かります。 私も是非作品拝見したいのですが、このサイトで投稿なさるご予定ですか？ (2019年9月21日 10時) (レス) id: 59aa6484cf (このIDを非表示/違反報告)
野蛮人と愉快な仲間たち(プロフ) - 纏めますと、「王直属の何でも屋」+「弾劾などを行う部隊」＝『軍のお掃除屋』。ですがこちらをメインで小説を書くわけではなく、今書いている小説の中に後付けとして組み込みたいと思っております (2019年9月20日 10時) (レス) id: af770bb773 (このIDを非表示/違反報告)
野蛮人と愉快な仲間たち(プロフ) - ･=･さん» すみません、完全にこちらの説明不足でした。いわゆる掃除屋というのは「王直属の何でも屋」に加えて「弾劾などを行う」部隊というものを私目線では＝軍の掃除屋と捉えています。なので、あくまでその「軍の掃除屋」としての機能をお借りしたいと思っております (2019年9月20日 10時) (レス) id: af770bb773 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：･=･ x他1人 | 作成日時：2019年7月7日 0時
