届け、伝われ ni ページ14
悲恋?、死ネタ?注意
胸が締め付けられるように痛い
そう思いだしたのはいつからだろう
あの日、私は紫色のストールをくるりと巻いた兄さんに会った
そこから、胸がずっと痛いのだ
兄さんは、私の実の兄という訳では無いが、面倒見がよくお兄さん的存在のひとつ上の先輩だ
いつもは表情があまりないくせに、ふとした時に顔を緩ませて笑ったり
いつも大人っぽいのに、動物を見ると子供のようにはしゃいだり
ほんとに心臓に悪い
顔を見る度に、心臓がドキドキして胸が痛い
少し不安になって友達に相談したら
「恋だな。そっかー、Aにも春が来たのか」
なんてからかってきた
それはきっと正しくて、私が認めたくないだけだ
ねえ、兄さん
私のこの想い、届きませんか
伝わりませんか
ねえ、神様
私のこの思い、届きませんか
伝えてくれませんか
ある日、朝一番に兄さんに会った
「おはよう」
その言葉が聞けただけでとても幸せです
上機嫌で学校へ向かう
ちらりと兄さんを見る
偶に出る関西弁が素敵で素敵で
ずっと続けばいいのに、なんて
兄さんと校舎に入って別れた
胸が痛くて、視界が暗く滲んだ
直後、激しい頭痛がし、床に叩きつけられた
次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった
周りを見渡せば、白で統一されたよくある病院の1室
両親やあのときからかってきた友達
その中に兄さんの姿はなかった
彼女と目が合う
「ばか。心配した」
彼女らしい
『ごめんね。大丈夫だから』
そう言えば、彼女は元々大きな瞳をさらに大きくさせ、静かに俯いた
そして訪れた沈黙
それを破ったのは、ドアの開く音
入ってきたのは、白衣を着た医者だろう人
その人は、悪いお告げを神から受けた預言者のようで
ゆっくりと開かれた口からは、現実味のない残酷な現実が突きつけられる
「あなたは、非常に申し上げにくいのですが…
内臓ガンに侵されています
しかも、進行が進んでいて…
もう、手術も、尽くす手がありません
もって、数ヶ月です」
ゆっくりと脳が理解をする
彼女が目を伏せた理由も、今朝のことも
私の命がもう無いことも
心臓の痛みの理由も
まだ、やりたいこともいっぱいあったのに
兄さんに伝えたいこともあったのに
現実は残酷だ
なのに、思っていたよりも悲しくはなくて
むしろ、納得していた
私よりも周りが疲れ果てていて
少し老けて見えた
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作者名:クラゲ | 作成日時:2017年5月6日 9時