Text.14 - I fell in the Wallace ページ14
「あなたが落ちた穴というのは時空の捻れと呼ばれるもので、一言で言うならあらゆる次元や時を超えて繋がるトンネルのようなものです」
時空の捻れ。
ネーミングからして想像はついたけど、エーミールさんの服装とか、部屋の作り的に遠い未来に来たわけではなさそう。かといって元いた世界とかけ離れた生活水準であるとも思えないし、ここほんとどこ。
「落ちてきたのって私だけですか？」
「はい」
「他に落ちてきたものとかは……」
「いえ、あなたの所持品らしきものは特に……何か紛失されました？」
ベッドが無くなってました。
なんて馬鹿みたいな事実は飲み込んで首を横に振る。
着の身着のままでこの世界に落とされたとなれば、失うものは何も無い。
強いて言うなら、この命のみ。
「それで……この国のことですけど」
城郭都市、独立国家、第四勢力。
先ほどの説明で耳にしたこれらの単語は、いずれもこの国を示す言葉に間違いないと思われるが、端的に言って、どう考えてもおかしい。
結論が端的すぎるとも思えるが、実際私の知る国の説明としては明らかにおかしいのだ。
何がって、だってほら、どう考えても
「あの、もう一度この国の名前を教えてくれませんか？」
「？ ウォーレスです」
「どこ!?」
「またしても振り出しに戻ります!?」
キレのあるツッコミはごもっともだが、私だってふざけているわけではない。
何度同じ内容を聞いてもなかなか脳が許容してくれないなんて、こんなの初めてですよ……
首を傾げるエーミールさんにはもう少しそのままでいてもらって、まずは心の安寧を取り戻そう。深呼吸大事。
「……戻った……？」
「戻ってます」
「よかった……え、あ、いやえっと、振り出しに戻った方じゃなくてですね」
「おや、心の声を拾ってしまいましたか。これは失礼」
「いえいえそんな！……ほんとすみません……」
思考回路すら正常に働かない状態で、何をしているのか私は。
いやしかし、整理しようとした情報が突飛なものばかりではさすがにどうしようもない。
これでも常人より冷静な方だとは思ってます。失神してないだけましと思って。
※
エミさんそろそろ他のメンバー紹介して。
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作者名：桜音風湊 | 作成日時：2018年4月26日 21時
