鍋で文明を語るな / *eml ページ25
“お疲れ様です”と共に仕事場を出て、肩を落とす。
――今日も慣れない新人なりに色々やらかして、やらかしたなりに怒られて。
でも、怒られている内が花だ。先輩たちは、できたぶんはしっかり評価してくれる。
厳しさだって愛だ。
……そんな風に前向きに考えられるのは、こう言ってくれた当人が、今は甘々な恋人となって、この扉の向こうで待っているからだ。
そうでなかったら今頃キツかったろうな、なんて思いながら鍵を開ける。
さて。心配かけないように明るく、意識的に高い声で『ただいま』を言おうとした――それを遮ったのは、リビングの扉の向こうから聞こえた爆発音。
予想外すぎる展開に暫し固まるが、やがて少しだけ冷静が戻るとまずは現場に向かう。
まあ、この音に原因があるとしたら、そんなの一人しかいないのだが。
「……何してるんですか、エミさん」
「あ、おかえり。ごめん、気付かんくて」
「そりゃレンジで膨張爆発した瞬間に帰ってきたら気づかないでしょうね。
袋はそのまんま温めたらダメですって、空気が膨張するから。少し端を切るとかしないと」
“あ、なんかそんなこと言ってたね”とあっけらかんに頷く彼は、社会学については延々語れても、物理化学と言われたら本当にからっきしである。改めて実感した。
「A遅くなるのかな〜って思て。これからそういう日もあるやろうし、俺も作れたほうがいいかな、とか考えたんやけど。
ほら、帰ってきて夕飯あったら、Aも嬉しいやろ?」
「それは嬉しい心がけなんだけど……う〜ん……
この調子じゃ一朝一夕にはできるようにならないだろうから、暫く一緒に作ろう。ね?」
――
―
「……すごい、文明の利器」
そんなわけで、ふたり一緒に立つ台所。
此処では大学教授の彼も小学生さながらで。
コンロの前に立ちながら感心したような嬉々とした瞳で、パスタを茹でる鍋を見つめるエミさん。
うーん、なんとも倒錯的である。
「鍋じゃないですか」
「いやいや、鍋って言うのは極めて偉大な人智の集合体ですよ。というのも、この器具一つで……」
そして始まる唐突な講演。だが私にはいつものことだ。また始まった、程度である。
しかし何度も言うようだが、それくらい知識を詰め込む頭があるなら、電子レンジの禁止事項くらい瞬時に理解してくれないだろうか。
( …………ああ、でも、 )
――
―
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メリージュ - 兄さんください。(._.)幸せなのだったら嬉しいです…。もしかしたら何度もリクエストしに来るかもしれません… (2017年12月3日 21時) (
レス) id: 1959cdd2de (このIDを非表示/違反報告)
さかにゃ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいております。どうしようもなくキュンキュンした気持ちを伝えたくコメントさせていただきました。私は特にほのぼのマンちゃんがお気に入りで何回も読んではキュンキュンしています！これからも楽しみにしています。 (2017年5月31日 20時) (レス) id: 6b07f0c14d (このIDを非表示/違反報告)
美音(プロフ) - うるつさん» コメント、ご感想、応援ありがとうございます！ リクエスト承りました。続編で書かせて頂くので、今暫くお待ちくださいね！ (2017年3月20日 23時) (レス) id: 8effde5d90 (このIDを非表示/違反報告)
うるつ - 本当にいつもみさせてもらっていて、鬱先生のを見るたびすごくキュンとしてたのしくみさせてもらってます!これからも頑張ってください! (2017年3月20日 13時) (レス) id: 8969005215 (このIDを非表示/違反報告)
うるつ - 鬱先生リクエストいいですか?できればかっこいい鬱先生とかがみたいです・・・ (2017年3月20日 13時) (レス) id: 8969005215 (このIDを非表示/違反報告)
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