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確かに赤ん坊を育てるとは言ったが、誰も"自分で"育てるとは言っていない。
僕は早速、使用人の中から乳母(母親替わりとなって子供を育てる人のこと)役の人を適当に見つけ出し赤ん坊を預けた。
後は適当な時間にでも様子を見に行ってやればいいだろう
そう思いながらぐーっと背伸びをする、午後3時
小腹が空くような空かないような…微妙な時間帯だ
幸い今日やる分の書類は全てトン氏が引き受けて(？)くれたし、この後の予定もない
食堂に小腹を満たしに行くか……と思い、自分の部屋を出る。
そのままやたらと長い廊下を歩いていると、角にある一室から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
その声にふと足を止め、開いているドアの隙間から部屋を覗き込む
泣きわめく赤ん坊に、必死に泣き止まそうとする乳母
乳母は赤ん坊を抱っこして必死に優しい言葉をかけているが、赤ん坊は暴れるばかりで泣き止む素振りもなかった。
「…！？う、鬱様…!!」
何を思ったのか、僕は部屋の中に足を踏み入れた。
いきなり部屋に入ってきた僕に驚く乳母。
中々泣き止まないから僕が怒っていると思ったのだろう、「申し訳ございません！」と頭を下げてくる
そんな乳母の腕で相変わらず泣き喚いている赤ん坊に目を向ける
首に提げた藍色のよだれ掛けは、涙でぐちゃぐちゃになってしまっていた
「………嘘…!?」
乳母の呟きが耳に入る。
僕が赤ん坊を抱っこした途端、赤ん坊はまるで泣いていたのが嘘のように眠ってしまった
僕も一瞬驚いたが、起こさないようゆっくりと乳児用ベッドに寝かせ布団をかけてやる。
…布団をかけてやる時、ふと藍色のよだれ掛けの端に白の刺繍が施してあるのが目に入った。
「……A？」
小さく刻まれたその文字は、この子の名前なのだろうか。
僕が刺繍に刻まれた名を呟くと、赤ん坊はその小さな手で僕の指を握った
「流石親子ですね、すぐに泣き止みました…びっくりです」
乳母の言葉ではっと意識が戻り、出口へと足を向ける。
別に、僕はこの子の父親になったつもりなんてない。
無駄な感情を追い出すように頭を左右に振り、乳母に「頼んだで」と言って部屋を出た。
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すみれいん(プロフ) - 読み返すと先の内容がわかっているため涙が出ます。違う、そうじゃない、違うんや…とつ 呟きながら読ませていただいてます！ (2020年10月3日 21時) (
レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - 涙が凄い出てくる....ヤバイ、とっても良い作品でした。 (2020年3月10日 14時) (レス) id: a5ab59d983 (このIDを非表示/違反報告)
のと(プロフ) - あっ......ちょっとさっきの文章だめでしたかね...？すみません (2020年1月3日 14時) (レス) id: 2f54580e61 (このIDを非表示/違反報告)
のと(プロフ) - た。感動しました！ありがとうございます！ (2020年1月3日 14時) (レス) id: 2f54580e61 (このIDを非表示/違反報告)
のと(プロフ) - え..何この物語凄い...！！最後のこの話終わってないやんけっ！！やべぇ！！ってなった時、心が射抜かれた感じでめっさ衝撃的でした！！...あと、私事ですが「金を運んでんの馬なんじゃね？？いやそれは無いか....っえ！？馬じゃん」ってなってすっごく喜んでしまいまし (2020年1月3日 14時) (レス) id: 2f54580e61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音羽リン
| 作成日時：2019年12月21日 11時
