よし、笑おうか【二口堅治】

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自覚した後は一瞬だった。

会えば目を逸らしちゃうし

逆に見つければ目で追っちゃうし

名前聞くだけでなんか嬉しいし

なのに話しかけられたら曖昧な態度とっちゃうし

でも話したいとか思っちゃうし

……こんな自分、知らない。



「最近のA、女の子みたい」

「生まれてからずっと女の子突き通してるつもりなんですけど」

「そうじゃなくて、可愛いっていうか……恋する乙女的な？」

「ブフッ」

「え、ちょA⁉」



彼女・舞こと滑津舞は友達で、気も合う大好きな子である。

そんな彼女は、無自覚にも私の今一番の難題を指摘してきた。

おかげさまでコーヒー牛乳の虹がかかりかけたじゃないか。

てか私って、そんなにわかりやすいのかな。



「ちょっとA、大丈夫？」

「ごめ……あー、死ぬかと思った」

「死因がコーヒー牛乳とかダサいよ」

「そうだね、絶対嫌だ」

「……それより、図星？」

「え？」

「恋しちゃった感じ？」

「……〜っ！」



“ 恋 ” という言葉が脳内を反芻する。

同時に二口の顔が浮かぶ。

なんだこれ、なんだこれっ！



「A、真っ赤だよ〜可愛いね」



ニコニコしながら舞が発した言葉に、また顔への集熱に拍車がかかる。



「……だぁーっ！」

「おーいA、どこ行くの？」

「外っ！」



とりあえず適当な理由をつけて廊下に逃げた。

室内より幾分か冷えた空気が、まだ熱の引きそうにない頰を包む。

こんな面倒くさい気持ちを抱えてから……というか、二口に会ったあの日から、早数週間が経とうとしていた。

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