今日は何さんですか？【川西太一】

木村さん ページ8

傘借りたじゃないですか。つまり返さなきゃいけないわけでしてね。

……俺、あの子の顔しかわかんないんですけど、どうしたらいいでしょう。

名前を知らないんですけど。なんなのあの子のクラス行って名前呼ぶときどうすればいいの。「俺に傘貸してくれた子呼んで」って言っても通じねーよどうしよう。

悶々と考え今に至る、傘を借りた翌日の朝。



「…………」



まぁよく考えたらね、俺が朝練の前に来るわけだから、早いんだよね。

教室の中、まじで人がいないよ。

辛うじて１人いたけど知らない人だよ、誰あの人。話しかけんのマジしんどい。

とりあえず彼女のや名前を知らないわけだし、名簿見てもあの子が何さんかわかるわけでもないし……



(あ、これ詰んだ)



あの子来るまで待ってる？いやいや、でも朝練遅れるわけにはいかないでしょう。鷲匠監督激おこプンプン丸になったら怖いし。

んー、と悩むこと約１分。

結果として、たまたま持っていたメモとペンで書き置きをして、廊下の傘かけにそれと一緒に置いてくることにした。


“ 直接返せなくてごめんなさい。助かりました。川西太一 ”


本当はもう少し気の利いた事を書きたかったんだけど、俺は不器用なのだ。無理ゲーである。

まぁその後小走り気味に体育館に向かって朝練に参加。で、レシーブやってた時



「……なぁ白布」

「あ？」

「『川西太一って誰だ？』とか思われてたらどうしよう」

「……は？」

「第一俺、フルネーム名乗ってないんだよな。もしかして小川って書いといた方が良かった？」

「悪い、何の話だ？」



心配になって昼休みに彼女の教室の前見に行ってみた。本人には会えなかったけど、メモ回収されてたので伝わったっぽい。

……てか伝わったのを願う。

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