今日は何さんですか？【川西太一】

野田さん ページ26

しっかりしようと決意したのはついさっき。

でも一瞬で後ろ向きな発想が、緊張が、全身をよぎった気がした。

普段ならばそれはいい話でしかないのだが、いかんせん条件が条件故に素直に喜べない。なんといっても覚悟ができてないわけだ。まぁ確かに悪い話に該当するだろう。

でもなんでだ？なんでAさんが俺を待ってんの？それは良いように捉えて良いの？もしくは逆？上げて下げられるのはごめんだ。

……けど



「……いってくる」



俺がそう言うと、白布はスゥと目を細めて自身の腰に手を当てて俺に聞く。



「その『いってくる』ってさ、『行く』？それとも『言う』？」



俺が「どっちも」と言うと、呆れたように、というか納得したように息を吐いて、俺の後方に歩いていく。

そしてすれ違いざまに



「そんなお前に良い話。『今外で宮下がお前待ってるぞ』……じゃあな」



そういって部室の方へ行ってしまった。

……話って、どっちもそれかよ。

まぁ、あいつなりの応援なのかな、なんて思ってみたり。そう思ったら、白布らしいなって笑えてきた。

着替えるには部室行かなきゃだけど、そうすると白布と会うのでそれはそれできまりが悪い。

でもだからと言って汗ぐっしょりで会うのは気が引けて。精神統一を兼ねて、水道の蛇口を捻って頭から水を被った。

タオルで拭いて、顔を上げたら、鏡に見慣れた自分の顔が写った。もう少し頼り甲斐のある顔なら良かったんだけどなぁ……いやまぁ、今更どうにもならないか。



「……よし」



覚悟を決めて、外に出る。

“ 外 ” としか聞いてなかったから、探す事になるかなぁって思っていたが



「……あ、いた」

「太一君！」



体育館を出たすぐそこに、いつもと同じように俺を呼ぶ彼女がいた。

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