今日は何さんですか？【川西太一】

井上さん ページ3

(……あれ？)



一度気にしてしまうと、案外自分は単純なんだと気付く。彼女を見ると「あ、相田さんだ」と思うようになった。

それでも、そんなある日



「…… “ 井上 ” ？」



教科書を忘れ、尚且つあまり持っている奴がいなくて、少し離れたクラスの友達を訪ねた。

教室に入ると、まぁラッキーというか。

そこは偶然にも彼女のいるクラスで、彼女は席に座って友達と話していた。

白鳥沢でかいから、会えない人は同学年でもとことん会わないので本当にラッキー。

そんな事を思いつつ、友達に教科書を貸してくれるように頼む。そいつは「じゃあ４限に生物の教科書貸して」と言いながらロッカーに俺が頼んだ教科書を取りにいく。

なんだよ、お前も忘れたのかよ。

そいつに「おー」と適当に返事をしながら、なんとなく教卓の上にあった座席表に目をやる。

が、彼女が座っている席は相田さんの席ではなくて “ 井上さん ” の席だった。一瞬友達の席なのかと思ったけど、彼女はその机にかかっている鞄からノート取り出してるし。

じゃあ本人の席？なら彼女は “ 井上さん ” ？



「川西ー、教科書」

「あ、おう、サンキュ……なぁ、あの人さ」

「は？どの人よ？」

「だから、あの……」



教科書を貸してくれた友人に、彼女の名前を聞こうかと思った瞬間

キーンコーンカーンコーン……

空気を読まずにチャイムが鳴り出した。

「ヤベっ」と呟き、そいつにお礼を言って自クラスに走る。



(くっそ、あの座席表……せめてフルネームで書いとけよ……)



そうすれば彼女の下の名前を知れたかも知れないのに……彼女が井上さんだったら、の話だけど。

え、相田さんじゃないの？でもぱっと見、あの座席表に相田という苗字はなかったような……

ていうか、相変わらず可愛かった。

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