本当は【ＨＱ短編集】

国見英 ページ10

俺の幼馴染は


「おーい、Aー……？」

「……」

「あ、いた」


喧嘩した後、何か腹をたてる事があった後、もしくは何か拗ねる事があった後、必ず何処かに隠れる。

今日もよくわからないけど、帰ってきたらAの靴があって、でも本人は隠れていていなかった。

とりあえず探してみたところ、客間にある棚と壁の間に収納されていた。

……いや、隠れる場所おかしいだろ。


「もしもーし」

「……帰ってください」

「ここ俺の家なんですけど」


俺だったら絶対には入れないようなところで体育座りして、顔を膝に埋めている。

ここで扱い方を間違えると、本格的に拗ねられてしまう事は経験上、百も承知だ。

彼女を焦らせないよう、慎重に言葉を選び、話しかける。


「……今日は何かあったの？」

「……」

「俺、なんかしたっけ？」

「……違うけど違わない」

「どっちだよ」


矛盾した内容を話すAはむくりと顔をあげる。そして面白くなさそうな表情で


「……友達が英に教科書借りたって言ってた」

「は？」

「ほ、他の子も……かっこいいって言ってた」

「……それがどうかしたの？」

「……なんか、やだった」


俺の幼馴染は、精神年齢が低いのかもしれない。

でも、そんな稚拙な返答が俺にとって、どれだけ嬉しいかとか、本人は理解してないんだろうな。

それ、俗に言う “ ヤキモチ ” ってやつだよね。


「……ふーん？」

「……なんかムカつく」

「そう、じゃあ帰る？」

「ご飯食べてから考える」

「だからここ、俺の家だってば」


何かあるとすぐにかくれんぼを始める俺の幼馴染。理由は至極簡素なものばかり。

でも本当は、隠れた彼女を見つけるの、好きだったりする。

見つけた瞬間、ちょっと嬉しそうな顔したりするAを見るのが楽しみだから。

まぁ、だから

これからも存分に隠れてよ。

ちゃんと見つけてあげるから。

茂庭要→←岩泉一＊

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