白布賢二郎* ページ6
『あれ?忘れ物?』
『今日の数学、難しかったね』
『……ごめん、白布君』
そんな声が、聞こえた気がした。
「────っ⁉」
バッと体を起こせば、そこは見慣れた寮の自室。時計を見ればまだ3時。
さっきのは多分夢。
「正夢にしては幸先悪過ぎた……」
その夢で俺はAっていう同級生にフラれた。
背景は教室でお互い制服。セリフも無駄にリアルでゾッとした。
「……って事があった」
「うわ、それは災難な……」
悪夢を “ 話す ” は “ 離す ” に繋がるなんて話を聞いた事があったので、太一に話しながら部活に向かう。
とはいえ、特に何もなく部活に差しかかろうとしている。
やっぱりただの夢だ、うん。
「……あ、教科書がない」
「別によくね?」
「いや、復習しないとだし……わりぃ、先行っててくれ」
結局忘れ物に気付いたため、太一には先に行ってもらい、俺は教室に戻った。
放課後だし、教室棟は静かで。人なんていないだろうと高を括って教室のドアを開けた。
「……え」
「あれ?忘れ物?」
でも1人だけ、中に人がいた。
よりにもよってA本人。
……ていうか、この流れまずくないか?
気のせいだって思いたい。あんなのたかが夢なのに、なんでこんなに心拍が上がるんだよ。
「あ、あぁ……数学の教科書、忘れて」
「今日の数学、難しかったね」
それを聞いた瞬間、背筋が凍った。肝試しとかとは違う恐怖。
なんだこれ、これじゃあまるで夢を辿っているみたいじゃないか。全然離せてねえし。
それに、このままいけば……
『……ごめん、白布君』
そんなのは嫌だ。
「……あ、確かに難しかったよな」
「ねー……白布君、顔色悪くない?」
夢1つに左右される俺は、無意識のうちに血の気が引いていたようだ。
それを心配されてしまった。
……こんな時になんだけど、Aっていい奴だと思う。
確かにこのまま告白しなければ、この距離を保てて、辛い思いはせずに済むかもしれない。
でも、それは逃げなんじゃないか。
それにもし、Aに彼氏が出来たとして。あの時告白していればって後悔するのは、もっと嫌だ。
だから
「なぁ、A」
「ん?」
「……好きだよ」
たとえ夢と同じ結末になったとしても
言っておきたいと思った。
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P.N 影黒 赤美 本名里崎雅美(プロフ) - 花見っ子さん» とても面白かったです!!ありがとうございます!! (2018年4月15日 19時) (レス) id: 3ce43cb10f (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - P.N 影黒 赤美 本名里崎雅美さん» 表立ったシチュリクは受けてなかったので、上手く答えられてるかは微妙なんですが、こんな感じでどうでしょうか……ご期待に添えれてなかったらすいません。リクエストありがとうございました! (2018年4月15日 19時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
P.N 影黒 赤美 本名里崎雅美(プロフ) - 面白かったです!!あの…リクエスト良いですか…?赤葦お願いします!!同じ2年で同じポジションでお願いします!! (2018年4月13日 22時) (レス) id: 3ce43cb10f (このIDを非表示/違反報告)
ひつじ*ひらひら。 - 見せていただきました!!とても素敵でした!!ありがとうございます! (2018年4月11日 9時) (レス) id: c9d3db91be (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - ひつじ*ひらひら。さん» 素敵だなと思ったので、シチュ(少し変えて)使わせていただきました!ありがとうございます。そして返事遅くなってすいません! (2018年4月10日 22時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2018年4月2日 20時