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突然の事に私は何の抵抗もできなかった。ただ引っ張られたせいで近くなった距離に唖然とするだけだった。
どこか夢みたいな状況だが、これは現実だ。
未だ掴まれている腕の感覚とか、あと一歩近付けば触れてしまいそうな国見の髪とか、状況を理解するほど余計に訳が分からなくなる。
「なあ」
「……ひぇ」
すぐ真横で聞こえる音に情けない声が出た。そんな私を馬鹿にするように笑った国見はその後すぐにその空気を変えた。
国見の意図がわからない。何でこんな事するの?
なんでそんな、辛そうな顔するの?
「……お前の言う“ 盗み聞き ” って、どこからどこまで?」
「は、え?どこからって……」
「どこ」
「……ほぼ全部、ごめん」
「責めてない、確認したいだけ……じゃあ俺が何て言って断ったか聞いてたろ」
『すいません、俺、好きな奴いるんです』
ごめん、聞いてたよ、知ってるんだ。
国見に好きな人がいるの、聞いちゃったんだ。いるんだろうなとは思ってたし予想はしてたけど、烏滸がましいけどショック受けちゃって。
でも「うん」って言えと?だからどうするの。聞いてどうするの、なんでそんなこと聞くの。
「……」
「無言は肯定と捉えるけど」
「……ごめん」
「だから怒ってるわけじゃない……俺『好きな奴がいる』って断った」
グッと私の腕を掴む国見の手に更に力が入る。ねえ国見、痛いよ。そんなに強く掴まないでよ。
でもおかしいな。痛いのは腕のはずなのに胸も痛いよ。なんでこんなこと聞かされてるんだ。本人の口から聞くなんて、破壊力強いに決まってるでしょう。
ねえ、何がしたいの国見。
それに、なんで
「……」
「それで、あのさ……っ、ごめん」
「国見……?」
なんで君が、そんなに泣きそうな顔するの。
「本当は言わない方がいいんだけどさ」
「なに、が」
「今までだって俺のせいなのに無責任だよな」
「今まで?何の話
「A」
「っ」
黙れ、と言わんばかりのタイミングで名前を呼ばれた。思わず言葉を途切らせて黙ってしまう。私は続くであろう国見の言葉に耳を傾けた。
そして本当に今にも泣き出しそうな顔の国見は
「俺の好きな奴がずっとお前だったって、そう言ったら困る?」
そう、言った。
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花見っ子(プロフ) - アップルキャンディさん» 最初から!?すごい嬉しいです!なら余計に更新ものすごく間が空いてしまってすいませんでした……このシリーズだけは絶対完結させます。お付き合い頂けたら幸いです。 (2020年11月30日 21時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
アップルキャンディ(プロフ) - 初めまして!シリーズ最初から読んでます!久しぶりに占ツク開いたら更新通知が来てて、コメントしたくなるぐらい幸せでした…。色々と拗らせてる国見ちゃん、読んでて苦しくなるほど好きです。無理のない範囲で更新頑張って下さい。 (2020年11月29日 18時) (レス) id: addc80a2b2 (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - ゆったーさん» そう言ってもらえるてとても嬉しいです!安心して書ける……更新頑張ります、コメント感謝です。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 端広コウさん» 急な逃走及び告知のない復帰にも関わらず、このようなコメントを頂けてとても嬉しいです。正直ちょっと泣きそう……更新頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
ゆったー - 綺麗で読みやすい文章!内容がしっかりしてて違和感がなかったです!ちょっとだけ見るつもりだったけど、凄いドンピシャで全部読んじゃいました(笑)キャラの性格と口調も掴んでて変に思わなかったです!更新楽しみに待ってます!長文失礼致しました (2020年11月29日 0時) (レス) id: d351a6af56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年8月11日 20時