《6》 ページ13
だから多分、恥ずかしいことを言えば初恋というやつだったんだろうと思う。
友達の延長線から始まったそれに俺は上手く対応できなくて、特に発展もなくあっという間に小学校卒業間近になった。
まあどうせ学区で同じ中学に上がるんだし、長期戦覚悟で行こうって思っていたのだ。
なのに
『何、引っ越すの』
『うん。中学、みんなと離れちゃうや』
寂しそうにAがボソッと呟いた言葉。聞いた瞬間顔には出さなかったけど泣きたかった。
神様というのは、つくづく意地悪だ。
中学になってもこいつがいないのかって、そんなの想像できなかったし、想像したくもなかった。
そこで上手い言葉の一つでも言えてたらよかったんだけど、所詮は俺だ。
『……ふーん』
いや、ふーんって何だよ。いくらなんでもそれはないだろ、と数年経てども思い出すたび思う。不器用にも程がある。
自分の不甲斐なさに泣けてくる。
『ふーんって何……国見は北一?』
『まあ、学区だし』
『へえ』
『お前はどこ中?』
『雨丸中だって』
『……どこそれ』
『よくわかんない』
詳しいことは本人もよくわかっていなかったようだが、スッと出てきた知らない学校名。Aの話が本当なんだって裏付けられてしまったようで、悲しくて。悟られないようにしてたらそっけない態度をとってしまったように思う。
まじで俺って情けない。
まあそんな俺だから特にこれといった行動を起こすことなく迎えた卒業式。そしてあいつは引っ越してしまった。
何事もなかったかのように迎えた中学の入学式、周りのメンツはあんまり変わらないのにAはいなかった。
……で、最初のうちは「会えなくなるならあいつのこと諦められるんじゃないか?」なんて単純に考えていたが、まあ無理だったわけだ。ズルズルと会いもしない奴の事を忘れられずに引っ張って。
それに転機が訪れたのは中2の秋頃だっただろうか。
[〇〇位・水瀬(雨丸中)]
中学入って暫くしてから始めた塾で張り出された成績表。
自分の名前を確認している時、ふとその文字が目に入ったのだ。言わずもがな水瀬というのは、あの水瀬だ。
というか正確に言えば水瀬の名前が目に入ったわけではない(だって知り合いだったわけでもないし)
俺の目が向いたのは
(雨丸中……Aのとこだ)
名前の傍に記された学校名。
594人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花見っ子(プロフ) - アップルキャンディさん» 最初から!?すごい嬉しいです!なら余計に更新ものすごく間が空いてしまってすいませんでした……このシリーズだけは絶対完結させます。お付き合い頂けたら幸いです。 (2020年11月30日 21時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
アップルキャンディ(プロフ) - 初めまして!シリーズ最初から読んでます!久しぶりに占ツク開いたら更新通知が来てて、コメントしたくなるぐらい幸せでした…。色々と拗らせてる国見ちゃん、読んでて苦しくなるほど好きです。無理のない範囲で更新頑張って下さい。 (2020年11月29日 18時) (レス) id: addc80a2b2 (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - ゆったーさん» そう言ってもらえるてとても嬉しいです!安心して書ける……更新頑張ります、コメント感謝です。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 端広コウさん» 急な逃走及び告知のない復帰にも関わらず、このようなコメントを頂けてとても嬉しいです。正直ちょっと泣きそう……更新頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
ゆったー - 綺麗で読みやすい文章!内容がしっかりしてて違和感がなかったです!ちょっとだけ見るつもりだったけど、凄いドンピシャで全部読んじゃいました(笑)キャラの性格と口調も掴んでて変に思わなかったです!更新楽しみに待ってます!長文失礼致しました (2020年11月29日 0時) (レス) id: d351a6af56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年8月11日 20時