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その後もまた、やっぱり少し沈黙があった。でもさっきのとは違った雰囲気で。さっきほど緊迫した様子じゃないというか。
落ち着いた後、少しだけ普通に話をして。
目的地がお互い逆だということがわかった。つまり、ここでお別れだ。
「引き止めて悪かった」
「大丈夫。それに話できてよかった」
「……そっか」
優しく水瀬君は笑った。というか、もともと水瀬君は優しい人だったのだ。いろいろあったけど、また前みたいに友達みたくなれたらな。
私がそんなことを思っていると、ふいに水瀬君が真剣な顔をする。急に雰囲気が変わって、スゥッと細められた目が、何かを捉えているような。
視線を追ってみるが、私にとっては普通の街並みが広がってるだけで。放課後のワンシーンに他ならない。
「……水瀬君?」
「お前、家近いよな、確か」
「え、そうだよ?てか声ちっさ……どしたの?」
「……気を付けて帰れ」
「うん?」
訳がわからず、?マークを並べていると、水瀬君が「……なんでもねえよ」って言って笑うから、なんとなく有耶無耶になってしまった。
でも私は能天気なので(自分で言っちゃう)、水瀬君と普通に話せてるのが嬉しくて、すぐに疑問なんてどこかに行ってしまった。
「じゃあ、またね」
「おう」
少し進んだところで振り返って、水瀬君に手を振ると、また優しく笑って振り返してくれた。
そのまま私は家に帰った訳だけど
「……気を付けろって、何に?」
──────────────
Aが帰り、水瀬も逆方向に歩き始めた。
水瀬とすれ違った人物も、何事もなかったように歩き始める。
その方向は、Aと同じ方向で。
「……おい」
その人物は、その声にひどく肩をビクつかせた。ブリキのおもちゃのようにぎこちなく後ろを振り向く。
そこには先程すれ違ったはずの水瀬がいて。
水瀬はいつも通りの歩調で来た道を戻り、その人物の前に立つ。
「あいつになんか用?」
「っ!」
「気付いてないとでも思ったか?バレバレだったぜ?なあ、あいつに何の用?」
「……」
「それとも何?……警察の用になるか?」
ギロリと水瀬が睨むと、その人物は怯み走って逃げていった。
その方向は水瀬の目的地の方向、つまりAとは逆方向だ。
「……チッ、なんだあいつ」
水瀬はそう呟いた後に、ひどく悩むそぶりを見せて、意を決したように電話をかけた。
「もしもし、久しぶり……水瀬だけど」
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雪猫(プロフ) - 花見っ子さん» いえいえ!大丈夫ですよ!続きも読ませてもらいました!国見ちゃん視点を読んでもっと面白いなって思いました!国見ちゃんがどう思ってたのかとか、あの誤解は結局どうなんだろうとか考えるのが楽しいです!続きも楽しみです!頑張ってください! (2019年8月19日 0時) (レス) id: 044c7ba7ac (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - しば子さん» 本当にコメント返すの遅くなってすいません……その上更新も酷く不定期で。その中で読んでいただけて嬉しいです。今後も少しずつ頑張りますので、よければまた見てくれたら嬉しいです。 (2019年8月11日 20時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 雪猫さん» ずっとコメントお返しできてなくてすいませんでした。今更なんですが本当にコメント嬉しかったです。自分で書いててあれなんですが、わかりにくいところも多いと思います。そんな中読んでくださってありがとうございました。続編も書いたのでよければ…… (2019年8月11日 20時) (レス) id: e5466e3cbf (このIDを非表示/違反報告)
しば子 - 国見推しなんですけど、話の続きがすごい気になるし続きを読むたびドキドキします笑このお話大好きです!更新楽しみにしています、無理しない程度に頑張ってください!! (2019年7月28日 10時) (レス) id: 923e20aa2a (このIDを非表示/違反報告)
雪猫(プロフ) - こうゆう感じのお話好きです!更新頑張ってください!!最近国見ちゃんが自分の中では来てて、続きが楽しみです! (2019年6月29日 1時) (レス) id: 7dccd2123b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年3月30日 21時