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『え、もう着いたん…』
平「意外とすぐやねんな…」
さあ、中国に着きました。
ものすごく眠たそうですね、2人とも…。
現地の通訳の方と合流し、とあるビルの会議室へ。
『通訳さん全然通訳してくれへんやん』
平「実は通訳じゃない説……」
『え？なんて？今あの人なんて言いました？』
平「俺英語できん…」
『これ中国語ちゃいますの…？』
平「中国語とか、もっとできんわ…」
『ですよね…』
英語やら中国語やら、よく分からない言語が２人の頭の上でふわふわ流れていきます。
平「もう多分俺らおるだけでええんやわ。じっとしとこ。」
『空気と化す…』
一通り話し合いが終わり、眠さも限界に来ているAくん。
あ、今こっそりあくびを噛み殺しましたね。
あちら側の重役っぽい人(仮名：王さん)が立ち上がって、Aくんの方を向き直します。
王「今1番好きな曲弾いてみて。」
『……今1番好きな曲？』
王「あそこのグランドピアノ、あれで」
『はぁ……。』
なんだなんだ、と思いながら、座り一呼吸。
ずっしり重たいピアノの蓋を開け、
真紅のキーカバーをはずし、
両手をそっと鍵盤の上へ。
まず頭に思い浮かんだのは、
ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」でした。
この曲は、彼の実の母である、真理子が生前一番好きだったもの。
幼い彼が、亡き母に褒められたい一心で練習した思い入れのある曲でもありました。
真理子が亡くなってからは1度も弾いていません。
『……』
静かに息を吸って、弾き始めます。
〜♪
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作者名：こぐま | 作成日時：2018年11月1日 22時
