【d!】人気作家の異世界生活【軍パロ】

◇牢屋からビジホへ ページ28

「僕は軍医のしんぺい神。よろしく」
神という字がデカデカと書かれた雑面を付けた体格のいい男性はそう言った。

フードを被った緑色のパーカーの男性は、軍医様の後ろからずっとこちらを睨みつけていて怖い。私があの家で気を失う前に見たのはこの人なのかな。

『あ、えっと、Aと申します』
「うん、Aちゃんね」
『え、あの、軍医様が、私になにか？』
「牢屋に入れちゃっててごめんね、今から部屋が変わるからついてきて欲しいんだけど」
『え？』
「隔離病棟ってとこに移動になったんだよ、そこに行くまで手錠取れないけど、ごめんね」

そう言いながら、足に繋がれた鎖の根元を壁から外した。
起こすよ、と腕を掴んで頂いたので、その力をお借りしてゆっくり立ち上がる。
足の鎖の先を緑色のパーカーの人が持ってくれるらしい。

「裸足やけどごめんね、ゆっくり行こっか」
彼に手を引かれ、重い扉の向こうにある階段を上がった先は綺麗な内装の建物だった。ただ、所々傷ついているけれど。
大理石のようにツルツルとした床をぺたぺたと裸足で歩いていく。

「おっそいわ」
そう後ろから声がしたかと思うと、脚の鎖がぐんと引っ張られ思わずつんのめる。手もつけない。このまま顔から転ぶかと思って目を瞑るが衝撃がない。
どうやら緑の人(以下略)に抱えられたようだ。俵を担ぐようにだけど。

「ペ神、これでええやろ」
「さすがに俵抱きはやめようね」
「俵抱きちゃうで、お米様抱っこや」
「女の子にそれはあかんの、やめなさい」
「ちぇ、楽なのに」

しゃーないな、と今度はお姫様抱っこされた。おっと、いい歳してこれは恥ずかしいぞ？

『おろしていただいても…？』
「却下や、お前歩くん遅いから面倒やねん」
「まあ、諦めてそのまま運ばれてね」

はい行くよー、とスタスタ歩いていく軍医様をこれまたさっさか歩いてついて行く緑の人。

あの私一応成人女性の平均体重あるんですけどなんでこの人こんなに軽々しく動いてるんだろう。時よりスキップ混ざってない？え？え？なに？こわ、え、軍人こわ。

両手が不自由なせいで首や肩を持たせていただいてバランスをとる、なんてことも出来ない。運ぶも落ちるも彼次第。

なんて色んな気持ちが入り交じったお姫様抱っこで運ばれてきたのは簡素な部屋。
机と椅子にベッド、3点ユニットバス。
なんか、リーズナブルなビジネスホテルに来た気分になった。

「一応、身元とか全部はっきりするまでここで生活してもらう。手錠と足枷は外すけど、外から鍵掛けさせてもらうのは許してね」

牢屋にぶち込まれる生活、から、軟禁生活に変わっただけでも御の字、かな。

◇至れり尽くせり→←◆予想通り

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