WORSTWEDDING ページ1
名字が山田にかわってから、色々あった。籍を入れてから遅くなってしまったけれど、今日、ようやく式をあげることができてすっごく幸せ。
社内のプロジェクトチームに引き抜かれて、大きな案件を成功させて。その過程で付き合って、一緒になろうって結婚届出して。
式場を見て、ドレスも試着して、お父さんと一緒にバージンロードを歩いて、涼介がベールを捲る。
「病める時も健やかなる時も、この人を愛することを誓いますか？」
神父さんに問われて、すかさず
「誓います！」
やや被り気味に出てきた声は、私の声のみで。
「涼介？」
小声で最愛の旦那の名前を呟いた時、後ろから大きな音がして、扉が開いた。
「ま、待ってください！」
私と同じ、真っ白なドレスに身を包んだ女性が乗り込んでくる。
漫画やドラマで新婦を連れ出すなんてシーン、幾度となく見てきたけれど、いざ当事者となるとしんどい。
しかも、よくよく見れば会社の後輩だ。
「行こ？涼介。」
「、ごめん」
苦しそうな顔で離婚届を握らせて、後輩ちゃんと式場を飛び出して行った二人。…ごめん、色々と理解出来ないんだけど。
「式は中止とさせていただきます」
呆然と一言つげて、私も逃げるように控え室に駆け込んだ。
・
人は驚きすぎると涙も出ない。たぶんそれだけはわかる。もう全部、なにもかもどうでも良くなってきた。明日の仕事も、これからの人生も。
一息つけば、騒がしい足音を立ててお母さんが部屋に飛び込んできた。
「よくきいて、A。涼介くんを連れ去った子、いたでしょ？」
「…、うん。」
「相手方の花婿さん、伊野尾財閥の息子だったの」
「え、伊野尾財閥？」
伊野尾財閥。この国でこの名前を聞いたことがない人がいるだろうか。小説、家具、家電、などと、様々な物を手掛けている、大きな財閥だ。
うちの会社のお得意様でもあり、少し前には創立記念パーティーにも招待されたことがある。
「無理でしょ。こんなのが伴侶なんて」
息子さんに泥塗っちゃうよ、とつぶやく。
「大の財閥の息子が、花嫁に逃げられたってほうが泥塗るでしょう。数ヶ月だけでも、形だけでもいいから花嫁役、受けてくれる？」
逃げられた方の気持ちも、奪われた方の気持ちも、痛いほどわかる。擬似夫婦なんていくらでもいるこの世の中。明日からのことも考えなくていいのなら。
「いいよ、わかった」
そう二つ返事で承諾した。
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くるみるく(プロフ) - なるほど…確かに法律的にも結婚生活を送っていませんし、裏切ったのが相手側なので特別に許されたのかもですね…。そこまで考えておらず大変申し訳ありませんでした。 (2018年2月22日 23時) (
レス) id: a029a20595 (このIDを非表示/違反報告)
くるみるく(プロフ) - 日本の法律では女性は離婚後半年経たないと再婚はできないことになっているのですが… (2018年2月22日 22時) (レス) id: a029a20595 (このIDを非表示/違反報告)
詩�辧� - 更新がんばってください！楽しみに待ってます！ (2016年10月18日 18時) (レス) id: 9112c66138 (このIDを非表示/違反報告)
あや - チョー面白いです更新頑張ってください (2016年8月25日 13時) (レス) id: 9a8b446080 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬由唯(プロフ) - コメント失礼します！！明日の公演お互い楽しみましょう！！（同じ公演で勝手に盛り上がってる人）← (2016年8月12日 20時) (レス) id: 1c912e7d77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ。 | 作者ホームページ：https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時：2016年1月16日 12時
