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「なあ、それはもう俺のだよ?早く返してよ」
「いいえ、まだサインを貰っていませんのでねぇ」
サイン…?
早速使おうと思っていた銃を返してもらおうと手を伸ばせば、
そんなことを言うタコくん。
いつの間にか、タコくんの触手の一本が一枚の紙を持っていた。
その紙を顔の前にズイッと渡され、
また別の触手でご丁寧にボールペンを握らされる。
「用意はしましたが、心配も警戒もしていない訳ではありません。
烏間先生とあなたにも生徒同様危害は加えない約束をしましたが、
あなたがその道具等で生徒たちに危害を加えた場合、話は別です。
そうならないためにも、ちゃんと契約を交わしましょう!」
ご丁寧な説明に納得した俺は、
用意されていた紙の内容を一応細かく読んでからサインをした。
めんどくさい母印も進められたけど、指が汚れるのが嫌で断った。
満足そうな顔をしたタコくんは、確認するとすぐに契約書を懐へしまう。
「確かに、契約成立ですね。これはお返しします」
ゆっくりと俺の手に銃を乗せて返してくれたタコくんは、
それから少しの間、保健室に留まってきた。
この道具たちはどうするのか、と聞かれたから、
趣味のために使うと言って説明すれば少し引いていた。
「そりゃあ死にたい時もあるけどさ、
この道具使って死のうとしてる訳じゃないんだよ。
結果的に、俺は生きている“実感”を求めてるようなもんだしさ」
「稲葉先生も大分偏っていますねぇ…」
「よく言われる」
それから、少しの間タコくんとお喋りをした。
俺の趣味を心配しているタコくんだけど、
話しても話しても、否定する訳でもなければ止めてくる訳でもない。
そんなタコくんと話すのが、少し心地よかった。
「しかし、やり過ぎは禁物です。
もしも誤って限度を過ぎてしまえば、最悪の場合もあるでしょう。
そうしたら、烏間先生も酷く悲しむ…」
そんなタコくんの言葉は、少し俺の心を濁らせた。
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“烏間は、俺にそんなこと思わないよ…”
なんて、言えるはずもなかった。
俺はただ、そんなタコくんの言葉を無視して
聞こえない振りをした――――。
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作者名：琉亜 | 作成日時：2018年9月10日 14時
