こっそり聴かないで (ページ7)

今日:3 hit、昨日:13 hit、合計:7,533 hit

6 ページ7

MH「描いたりする程度には」

「わ、、、素敵ですね」

視線をミョンホさんから壁にかかっている絵に戻すと、

MH「実はAさんがいま見ている絵、描いたんです」

「え！」

ミョンホさんを見ると、彼は微笑んで、

MH「おもしろい表情しますね」

「だって、、」

MH「さっきAさん言ってましたよね？
　 ”生々しいけと、繊細”って。詳しく聞いてもいいですか？」

「いやいや！評価したとかじゃなくて、感想です、ただの、凡人の」

MH「なんで焦るの？ふふっ
　凡人の感想だったとしても、聞きたいです」

ミョンホさんの顔が近づいてくるから、思わず、また壁の絵に視線を戻す

「感情的で破壊的なコントラストなのに」

MH「そこが生々しい？」

「はい。でも、白の絵の具の部分だけは
　躊躇ったようなタッチで描かれている気がして」

MH「一番苦しいときに描いた絵なんです」

「苦しい時、、、」

MH「自分に自信がなく、見失って、やりきれなくなったそんな時に
　ただ、これを描くことで、空いた穴を埋めれるような
　そんな満たされた感覚になったんですよね。だから、、、

　 Aさんの想像通りですよ。やっぱり見抜かれちゃうものかな」

ミョンホさんが悲しく微笑むから

「見抜いたんじゃなくて、、、なんていうか
　作品が作者の感情や伝えたいことを表していることって少なくないし」

MH「大丈夫。もう、この時の傷は癒えてるんだ。
　 Aさんのおかげもあるけど」

「え？わたしですか？」

MH「自分の描いた絵の感想なんて、他人に初めて聞いたけど
　それがAさんでよかったなって思いました」

「いやいや、恐れ多いです」

あ、そうだ！と閃いた顔をしたミョンホさんが
私の前に2枚の紙を差し出した。どうやらチケットのようだった。

MH「よかったら、これ。来週、知り合いの展示があるんで」

「あ、いただいても、いいのでしょうか？」

MH「もちろん！っていいたいところだけど、やっぱり、これだけ」

そういって、ミョンホさんが持っていた2枚のチケットのうち
1枚をミョンホさん自信の胸元へ持って行き、
もう1枚はわたしの目の前に差し出されたままだった。

MH「よかったら、一緒に行きたいです」

「え？」

MH「ひとりでいくつもりだったんだけど、
　 Aさんの分析を一緒に見ながら聞きたいなって思って」

「でも」

MH「もし好きな人がいて、迷惑なら断ってください」