ただいま、先生《名前変換オリジナル短編》 (ページ3)

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３・いま、目の前に貴方が居る事がページ3

「突然ですが、先生から君達に報告があります」

体育終わり、６限目の学活の時間。

唐突に先生はそう言った。

でも、先生からの報告なんてそうそう大切な事じゃない。

皆どうやらそう思ったらしくて、あまり教室は静まらなかった。

でも、世の中には例外があるんだなと、

それも結構な例外があるんだなと思わせられた。

「先生は、今学期一杯で教師を辞めます」

不意に心を突かれたみたいだった。

先生のその発言には皆も静まり返った。

「そうしてなんですか？」

誰かが先生に向かって聞いた。

すると、先生は少し悩んでから改めて私達の方へ顔を向けた。

「皆さんは筋萎縮性側索硬化症という病気を知っていますか？」

いきなりの質問に戸惑う。

少し話が小難しかったから誰もその問いに答える人は居なかった。

「知らないのも無理はないですね。筋萎縮性側索硬化症、略してALSというのは
筋肉が痩せてだんだん力がなくなっていく病気の事です。
この病気を発症するとだんだんと筋肉が痩せ、歩けなくなり、やがて死に至ります」

死という言葉に更に教室が静まり返った。

「現在の医療ではALSは進行を遅らせる事ができるだけで、
病気を完治させる事はできません。世に言う難病というやつですね」

段々と話のスケールが大きくなっていく。

そして、私達の不安も大きくなっていく。

もうこれ以上口を開かなくっても私達には

先生が教師を辞める理由が安易に予想がつく。

でも、先生は最後まで口を開いた。

「先生は、ALSを発症しました」

もう、誰も何も発しなかった。

先生はALSという難病を発症し、命の灯火が今も少しずつすり減っている。

そんな事実だけが心に残ったのが今から３ヶ月ほど前の話。