【太陽の君】 ページ28
こんなにも求めてしまうほどに好きになっていたんだと実感した。
小さな思い出がいくつもあふれ出てくる。
初めて誰かを好きになった俺は、人を好きになることの重さを初めて知った。
失う辛さを、知った。
あの日、あの後。
Aは家の前で倒れたそうだ。
そして目覚めることなく、空の彼方へと旅立ったそうだ。
「A、」
やり残したことが、もしもお前の好きな人が。
俺だったなら、それならお前はもう少しでも幸せだっただろうか。
『時間て、あげられないんだよグク。』
『わかってる。だけど、俺は、』
『ごめん、それ以上は聞けない。』
なんであんなにも人に囲まれていた太陽みたいだった君が。
最後は独りを選んだのか。
『誰も悲しませたくないの。』
最後に、つぶやくように言ったAの声は確かに震えていて。
抱きしめてやれたなら。
想いが届いていたのなら。
太陽は、最後まで俺を照らしてくれていただろうか。
フラフラと歩く夜の街。
車の光に目がくらむ。
パーっと大きなクラクションの音が鳴り響いた。
.end.
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作者名:ユル | 作成日時:2018年10月19日 18時