綺麗事は褪紅色 ページ8
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その瞳の問いを無視することもできず先程考えていた綺麗事についてを掻い摘まんで話す。彼女は相づちを打ちながら、けれど口は挟まずにゆっくり聞いてくれた。聞き方のプロなのかもしれない、と小学生のような感想を持ちながら話しているうちに、自分の考え方でさえ馬鹿みたいだと思えてきた。それでも、さくらは聞いてくれる。
「……たしかに、この世界は綺麗事で溢れていると思う。それに、現実はそこまで甘くないってことも」
現実が、綺麗事のように甘かったなら、私たちはこうして人質になっているはずがない。景山がこの教室にいないのは、その真実を知るために先生がこうした手段を取ったのは、現実が綺麗事で終わらないことの証明だと言っても過言ではなく、綺麗なものに溢れていたならば景山は、きっと今もさくらの横で笑っていただろうから。彼女の言葉には、私以上に説得力がある。それは、甘くない現実をひしひしと胸に感じ、言い表しようのない苦さを実感したからなのだろう。
「でも、それでも、綺麗事を信じちゃ駄目ってわけじゃないよ、きっと。何かに期待しても、ありもしないようなことを望んでも、良いと思う」
それで裏切られたり、失敗したりしても仕方ないよ、と笑う。継ぎ接ぎだらけで繕った言葉だが、それでも彼女の優しさを感じる。何か、目に見えないものを期待する。それでも良いと彼女は言う、即ち、彼女は先生が目覚めることも信じれば良い、と説くのだ。
私たちは未来が見えるわけではない。これからどうすれば良いかなんて分からない。それでも、何かに期待して、失望して、生きていかなければいけないのだ。そのためには、綺麗事を信じることだって仕方ない。
世の中の薄暗いところを見ているのが私だとしたら、さくらはおそらく、薄暗いところを見つつも明るいものを望んでいる。失望せずに、いや、失望してもどこかに望みを見出している。そこが、私と彼女との大きな違いだ。彼女は強い。特に、人質となってから。
「そっか。じゃあ、私は綺麗事を信じることにしようかな」
あどけない笑顔が見え、私も、と声が遅れて聞こえた。
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鑑 涙栖(プロフ) - luna???さん» ありがとうございます……！何と表して良いか分からないくらい嬉しいです、文面へ普通ですがとても興奮しております。更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年2月17日 7時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
luna???(プロフ) - 作品とても面白くて毎日、更新されたか見に来てる位本当に好きです笑また更新待ってます！ (2019年2月16日 23時) (レス) id: 654049e628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年2月14日 16時
