黒いだけの瞳ならば愛さない ページ4
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これは完全に出遅れである、今更美術室へ向かっても、私は話について行けないであろう。誰かからの知らせをゆっくり待つとしよう。これから追いかけていても仕方ない。空気を読む、という日本語がある。ここで出て行けば、茅野さんをひとりぼっち(先生がいるためこの表現は的確ではないが)残すことになる。私もここに残ろう、と決心した。鞄の中にあるものは、特に取り出したいわけでもなく……いや、スマートフォンだけは手元に置いておきたい。先生のご尊顔を永遠に残すために。
あっ――と声が漏れた。茅野さんはばっちり私の方へ目線を向けていて、逸らすまいとしている。黒々としてはいるが、希望を忘れていない瞳だ。私は、この瞳が好きだ。初日、あの甲斐に膝蹴りをしてまでも自分の想いを訴える彼女の瞳は、どこまでも揺らぎなく、純真で、迷いはなかった。瞳の中心へ真っ直ぐに見据えられたからには、その場を立つわけにもいかず、私は彼女の隣に腰を下ろした。
「白雪さん」
「あは、Aでいいよ、さくらちゃん。いや、さくら？」
可憐で可愛らしい声を折るように私は告げる。本物――ではないが、白雪王子の傍で白雪さん、はくすぐったい、いや気恥ずかしい。彼女は真面目であるから、私の名を苗字に「さん」をつけて呼んだのであろうが、それが自分の名前でない気分で、白雪、その言葉は、今は彼の……先生のことを表すための言葉なのではないかという思考に陥る。変な気分だ。さらに言えばもともと嫌いだった苗字故、私は名前で呼ばれることのほうが好きだ。
そんなことより、“ちゃん”と名前の下につけて女子の名を呼ぶのはどうしてなのだろう。なんだか幼稚な表現のような気がして、私は躊躇いながらも所謂呼び捨てというものをしてみる。少し驚いたようではあるが、茅野さん、もといさくらはにこりと笑って「A」と鸚鵡のように繰り返した。細くなる目にさえ光が宿る。やはり、私はさくらの瞳を恋うている。
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鑑 涙栖(プロフ) - luna???さん» ありがとうございます……！何と表して良いか分からないくらい嬉しいです、文面へ普通ですがとても興奮しております。更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年2月17日 7時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
luna???(プロフ) - 作品とても面白くて毎日、更新されたか見に来てる位本当に好きです笑また更新待ってます！ (2019年2月16日 23時) (レス) id: 654049e628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年2月14日 16時
