白を見る戦士の瞳 ページ18
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どうして、と止まったものがまた流れ出すようだった。廊下を歩いた先に見えたのは、見たくもない姿で。全身の力が抜けて膝が床に着きそうな気がしたが、ぐっと脚に力を入れてしっかり地面に立つ。浮気を発見した妻のような気分で現実を目に映し込んだ。
せんせい、と、さくら。まだ体調が優れないのかさくらに縋るようにしてどうにか歩く姿が、とても勇姿に見えて私は言葉を無くす。怪我をしてまで戦場へ向かう傷だらけの戦士と、それの看病をする従軍看護婦は、戦争の傍観人に気付いて手を振る。へらりと作り笑いをして振り返す。さくらは先生に何か言って、先生はちょっと驚いたような顔をして。先生が無理に私に近付こうとするので、焦ってしまい私は駆けるように先生に向かって足を進める。先生に無理をさせてはいけない、と状況が語っていた。
「ありがとう」
「へ」
先生の口から出た感謝の言葉に間抜けな声が漏れてしまう。何に対してのありがとう、なのかが判別出来ずに私の瞳は、また先生の唇へ向かってしまう。ああ、私のものが触れたそれが動いている。彼は目覚めたのだと。良いのだか悪いのだか分からない状態に困った顔をしそうになるが、悟られないように必死で隠す。
「白雪も、看病してくれたんだろ」
やだなあ、看病なんて。私は病人の口を塞ごうとした悪人ですよ、だなんて言えるはずもなく、そんなの当たり前ですよ、つまらない返事を返す。にこーっと固めた笑顔に気付いたのか気付いていないのか、微笑んで先生は私の頭を撫でる。ああもうやめてくれ。今になって白雪、なんて呼ばれたくもないし、そうして優しくされるのも心がずきずきする。子ども扱い、当たり前のように。先生と生徒なのだからそれが基本であって、先生にとって私など恋愛対象にしてはいけないはずで。それを頭では理解しているのに、感情が理解しない。
「もう、先生、くすぐったいです」
無理やり笑うと、柊一颯は“柊先生”になる。つまり手を私の頭から離し、また執念深い戦士の眼差しで美術室を見据える。それで、良いのだ。先生は、それで正しい。生徒を恋愛対象として見るような教師には、柊先生にはなってほしくない。それで良い、と言い聞かせておきながら私はまた涙が溢れてくるようだった。二度目のトイレは言い訳に使えないぞ。ぐっと力を入れればどうにかおさまるほどの涙だ。流す必要すら、ないのだから。
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鑑 涙栖(プロフ) - luna???さん» ありがとうございます……！何と表して良いか分からないくらい嬉しいです、文面へ普通ですがとても興奮しております。更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年2月17日 7時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
luna???(プロフ) - 作品とても面白くて毎日、更新されたか見に来てる位本当に好きです笑また更新待ってます！ (2019年2月16日 23時) (レス) id: 654049e628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年2月14日 16時
