青白磁の消えた鏡の向こう ページ17
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ふと我に返ると、ああどうして私はこんなところで涙を流しているのだ、そんな気分になった。すると、先生に口吻したことよりも、トイレで泣いている惨めな女、の方が恥ずかしい気がして、はっと顔を上げる。大丈夫だ、誰にも気付かれていないキスだった。さくらが気付いていたとしても、彼女は優しいからきっと黙っていてくれる。次から次へと噂が広まりあることないこと騒がれるクラスやSNSとは違うから。
ぐっと唇を噛んで、鏡の前に立った。まじまじと鏡の先の私の姿を見るのは久しぶりだった。目は赤く、涙で濡れていてとても綺麗な目とは言えない。涙の跡が頬に残ったその顔は、むしろ不美人とも思える。はは、なんて顔してるんだ、と腕でごしごし顔を擦る。次に見た私の姿は、それでもまだ顔が紅潮していたが、すっきりとした顔をしていた。
昔から泣いたことを誰かに知られるのが嫌だった。両親ならまだしもなぜ赤の他人に泣き顔を見せなければいけないのだ、という気持ちが起こっていて。だから、泣いたあとは、それがバレないようにそっと顔を洗う。水が全て洗い流して、ちょっと生まれ変わったような心地がする。おあつらえ向きにここはトイレである。鏡の下と言えば洗面台、私はいつものように水を出してまずは涙でべとついた手を洗い流した。それだけでも触れるもの全てが清々しく感じられる。ふふ、と少しいい気になりながら今度は顔。手をお椀のような形にし、水をいっぱいに溜める。それで顔全体を洗い流した。爽快、快感。何度かそれを繰り返した先に、鏡を覗くとそこには明るい顔の私が立っている。
「鏡よ鏡、」
そう言いかけてやめる。世界で一番美しいのが、私でないことは知っている。けれど、私にとっては鏡に映った自分が、とても美しく見えて。浮かれていたのだけれど、それでもいいか、とトイレを出る。まだ目元は紅いけれど、どうにかなるだろう。心地良さを感じながら長い廊下を歩く。まだ皆ざわざわと美術室を捜索しているのかしらん。きっとこんなに何かから解放されたような表情をする女子生徒が廊下を歩いているなんて知らないんだ、と一人微笑んだ。
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鑑 涙栖(プロフ) - luna???さん» ありがとうございます……！何と表して良いか分からないくらい嬉しいです、文面へ普通ですがとても興奮しております。更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年2月17日 7時) (
レス) id: 3eec8abc69 (このIDを非表示/違反報告)
luna???(プロフ) - 作品とても面白くて毎日、更新されたか見に来てる位本当に好きです笑また更新待ってます！ (2019年2月16日 23時) (レス) id: 654049e628 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鑑涙栖 | 作成日時：2019年2月14日 16時
